会社の入っている建物が老朽化のため、取り壊されることになり、10月31日までに退去するように、と手紙をいただいてからというものの、やっぱりなんだか気分も良くなく、不動屋さんに家賃を納めに行っても、何を話すでもなく、無言で立ち去っていた。
無論、その向こうにあるオーナーさんとも話をせず、いわゆる一つのミスコミュニケーションだった。
新しい社屋を探しに、近所を自転車で走っていた。
10月末に出ていくのなら、今のうちに探さねば、と。
良い物件もあった。
202平米、地下室有、駅近徒歩3分!とか。
ただやはり。
現在の80平米、駅から徒歩8分であっても築50年、木造の社屋に比べると、どこの物件だって値上げにはなる。
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現社屋 |
とっても、とっても気に入った物件もあり、オーナーさんとも面談し、盛り上がっていたのだけれど、価格交渉がまとまらない。
毎月の事で、ずっと続くことだから、やはり私としても慎重になる。
現在の建物については敷金なるものが返ってくるのではないか、はたまた立退料だってもしかしたら、なんて思って確認の意味で、不動産屋さんに電話すると。。。
「いや、あの、そうですよね、あの手紙を見たらそう思いますよね。でも、実はオーナーさんのほうで、ぜひりょくけんさんに新しい建物でも使っていただけないかと様々な案を考えているところでして。」
「え?」
寝耳に水だった。
ここ数週間、けっこう一生懸命、物件を見た。
(楽しんではいたが、、、金額を見るまでは。)
「そうなんですか!?」
「はい、実は二棟建てる予定でして、隣の建物を年内に壊して新しいものを作って、そちらの一階部分をぜひ使っていただけないかと。もしくは住所が同じの方が良いということでしたら、引っ越した後に再度、元の場所に建てる建物に引っ越していただいてもかまわないそうです。」
住所は、重要。
ホームページは一瞬で変えられる。
登記簿も1回ずつ司法書士の先生と法務局に行けば済むだろう。
ただ、この大量のジュースやお茶など加工品に貼られた住所は何万枚と変更しなければならない。
それがしなくて済むのなら、なんていうか、気が楽だ。
「一度、話をしましょう。」
「そうですね。」
というわけで、大がかりな引っ越しはしなくて済みそうな雰囲気になってきた。
自宅から少し近くなる、とか、引っ越し先の周りにはあの食べ物屋さんがあって、みたいなうきうきした気持ちがなくなり、でも、ちょっとほっとしたような、複雑な気持ちだった。