3回目の電話で、愛媛のハウス栽培名人で、政府からもどうやら「達人」として表彰されたことのある山崎さんとつながった。
「あ!」
つながると思ってもみず、思わず声が出た。
「私、東京で八百屋を営んでいます、株式会社りょくけん東京の大森、と申しますが!はじめて電話するんですが。」
「はいはい。」
優しい声だった。
「実は、ハウス栽培のグレープフルーツを探していまして、、、しかもピンクグレープフルーツが良いのですが、山崎さんが作られている、と伺いまして。」
「あ~申し訳ない、、、実は体を壊しましてなあ。今年はハウスの加温もしてないので、出荷できるものが何一つないのんですわ。」
「え~!」
でも、そこからしばらく、グレープフルーツについて、ひとしきりお話をした。
「そうですか、露地のグレープフルーツを今も販売されてるんですか。」
「はい、でも糖度がなかなか上がらなくて。ハウスや樹上で長く置くことも考えてるんですが、、、」
「私の経験をお話しいたしますと、日本の露地で栽培する場合、どんなに樹に長く置いても、糖度はせいぜい10度。それ以上には上がらんでしょう。」
「そうなんですか!」
「グレープフルーツと言うくだものは、糖度があまり上がるくだものではないです。ハウスで栽培しても11度が限界。そういうくだものだと考えています。」
「ところで、山崎さん以外に、ハウスのグレープフルーツを栽培している方はいらっしゃらないんですか?指導とか、技術も広くお教えしていると伺いました。」
「そうなんよ。全部教えているんだけれど、農薬を使わないやり方で、なかなか付いてこれる若者がおらん。誰も引き継ぐ者はいないんよ。」
山崎さんは地元の農協でも、指導的立場にあった方。
自分の技術を隠すことなく教えていたけれど、ついに引き継いで、継続して栽培する方は現れなかった。
「…。お体を悪くされたと伺いましたが、今おいくつなんですか?」
「今年で68歳になります。」
「68歳ですか!じゃあ、まだまだ現役でやらないといけないじゃないですか!?」
「そうなんよ、まだまだやらないといけないんやけど、、、こんな状態ですわ。」
我ながら、初対面(?)の方に失礼なことを言ったものである。
でも、それくらい食べたかったし、お客様にご紹介したかった。
残念だけれど、愛媛に足を延ばした時には、またお伺いして、実際お会いしてみたい。
また、ひとつ楽しみが増えた。