美味しいことはもちろん、生産する側が楽になるというのも重要なテーマだ。
品種改良の主眼もそこに置かれることが多い。
最近の成功例で言えば、白ブドウ”シャインマスカット”が挙げられるだろう。
樹勢が強く、生長スピードが速いモンスター級の品種と言って良い。
あまり触れられないが、白ブドウであることも重要だ。
黒ぶどうの場合、昼夜の寒暖差がないと、黒くならず、価値が下がるが、白ぶどうの場合、色づきは必要ない。
この傾向はりんごにも言える。
晩生の赤いりんごに、”ふじ”という優れた品質のりんごが君臨し、ほかの赤いりんごが登場しづらいことも一因だが、品種改良で新たに生まれるのは、青りんごが多い。
赤いりんごの場合、葉摘みという作業と玉回しという作業がある。
赤いりんごは、気温が下がることで赤くなるが、その際、日が当たらないと赤くならない。
葉の陰になった部分は、熟すと緑から黄色になり、赤にはならない。
青森では、果実の周りの葉を徹底的に摘み取る。 |
青森の農家さんは、葉を徹底的に摘みとる。
玉回しと言って、ぐるぐるとりんごの実を回し、満遍なく日が当たるようにする作業も行う。
日のあたっていない部分をグイッとひっくり返す。 |
青りんごの場合、この二つの作業が不要のため、作業効率が良くなる。
だが、青りんごが世に認められるようになるには、乗り越えるべき二つの障壁がある。
ひとつは、グラニースミスというりんご。
世界中で栽培されている青りんごだが、最大の特徴は酸味。
緑色の皮のイメージも手伝って、青りんごは”酸っぱい”とイメージされてしまう。
グラニースミス(酸味の強い青りんご) |
もうひとつは、王林。
長きに渡り、青りんごの代表だ。
香りがよく、大玉で、ジューシー。
そして甘い。
良いこと尽くしに聞こえるが、唯一にして最大の弱点が、やわらかくなりやすく、果肉がもさっとしてしまうこと。
ふじの登場も重なり、一気に他のりんごが売れなくなるため、王林は店頭で売れ残るようになり、もさっとした食感に変化していく。
青りんごにはこの果肉の柔らかいイメージがすっかり定着してしまった。
王林。りんごの王様になるように、と名付けられた。 |
ただ、最近の青りんごは、さにあらず。
果肉も固くしっかりしていて、蜜が入り、日持ちも良い。
そんな青りんごが数多と登場している。