ご自宅から再度、車に乗ってすぐのところに、甘平(かんぺい)もあった。
何度か触れたが、愛媛県が開発する高糖度オレンジみかんのひとつだ。
とても複雑な交雑をしていて、わざと模倣できないようにしているのでは?と勘ぐってしまうほど。
清見とトロビタオレンジを掛け合わせて生まれた”西之香”に、ポンカンを掛合せて生まれた果実の種子を撒いてできた木の枝を、別の温州みかんに接いで、生まれた柑橘。
清見の親が宮川早生みかんとトロビタオレンジなので、やっぱり複雑。
例によって甘みが強く、手で皮がむける、という最近のヒット品種の特徴を持ち、やや扁平な形をしているので、甘平という名前がついたのだと思う。
甘平。 |
「ん?なんだかみかんの畑をたくさん見た後だと、ずいぶんと生りが少ないですね。」
「そうですよ。みかんだけが例外的にたくさん実が生りますね。他の雑柑類はこんなもんですね。」
そういえば随分と畑に果実が落ちている。
「落ちるのが当たり前くらいに思っていないとやってられない果実ですね。」
生理落果と言って、自然に落ちてしまう。
「それと、割れが多くてね。」
果皮がすぐに割けてしまうのだ。
手で皮がむきやすい、というのはこの、裂けやすいという症状と表裏一体なのかもしれない。
裂けてしまった甘平。このあとすぐ摘果(間引き)。 |
「だから、やっぱりみかんよりも高価になりますよね。」と石丸さん。
そこから少しまた山の方に進むと、やや木陰になったところに、カラマンダリンがあった。
私と石丸さんを結びつけた品種なので、私も思い入れが強い。
「これは4月頃の収穫だから、まだまだですけどね。」
カラは比較的古い品種。
温州みかんにキングマンダリンを掛け合わせ、アメリカで生まれた。
1935年の事なので、80年も前の柑橘だ。
日本に導入されたばかりの時は、酸味が強すぎる、と見向きもされなかったが、4~5月にヒヨドリがたかっているのを見て、食べてみると減産されて、美味しいということで、着目された。
ここ数年でまた多く見かけるようになってきたのは、5月くらいに他の雑柑もなくなってくるからだと思う。
みかんのように手で皮が剥け、種は少し入るけれど、高糖度で食べやすい。
甘平や紅まどんなに比べると栽培も容易で、収穫量も多いのが利点だろう。
カラマンダリン。 |
「そうそう、前に電話くれた”南津海(なつみ)”。山口の大島でポンカンと掛け合わせてできた、ゆうんですがね。ほとんど変わらなくて、僕ら生産者が見ても、まったく分からないんですわ。」
カラマンダリンが終わった頃に始まる”南津海”。
時期もずれるので重宝する。