海岸沿いの道をまたしばらく車で進むと、またまた少し広いスペースがあり、今度は道路の右脇に停めた。
「ここや。」
先ほどの園地よりは傾斜が少ない。
今度は人の足で登っていく。
藪の後ろ側にあり、先ほどのみかん畑が、太陽をいっぱい浴びているのと対照的に、こちらの畑は木陰になっている。
他人に譲ったという園地は藪の影になっており、逆光の中、写真に収めた。 |
「もうおいちゃんも年だけんの。今年は面積を減っしたのよォ。ここの畑は若いのにやっての。」と川田さん。
「この藪も”切れ~”って言いよったんやが、、、木陰になっちょるから、極早生の中でも一番遅くにとるようにしていた場所なんよ。おお、でも色づいてきちょるわい。」
そう言って愛弟子のみかんを一つ二つ切って私に渡してくれた。
川田さんオリジナル品種 ”太陽のしずく” |
川田さんの極早生品種は、特別である。
川田さんが組織したみかん生産グループのオリジナル品種で、”太陽のしずく”と名付けた。
「これは、”太陽のしずく”ですね!ところで、これは品種登録はしているんですか?」と聞くと
「弁理士に頼んでな。調べたんよ。沖縄のマンゴーの商標として登録があっての。それで向こうにも確認とったら、みかんなら付けて良い、と。それで登録もしている。」
どうも、それだけを聞くと、商標登録はしているけれど、品種登録はしていないのかもしれない。
品種の登録をすると、グループだけで独占できず、一定の期間が経てば一般の流通にも流出しなくてはいけないから、川田さんはそれを避けたかったのかもしれない。
いただいたみかんをおしりから半分にして剥くと、中のじょうのうは薄く、果肉が見えた。
じょうのうを薄くするのは、水分コントロールだ。
そして、うまく半分に剥けずに、中が見えるのは、じょうのう=内袋が薄いだけでなく、糖度が高いみかんであることを示す。
口にすると、やっぱりおいしい。
内袋はとろけるようで、まだ酸味もあるものの、糖度も高い。
持ってきた糖度計で測ると11.5度くらいある。
「おお、糖度計も持って来とったか。」
「はい。川田さん、11度以上、すでにありますよ!」
「うん、そんなもんか。この極早生なら、13度くらいは行くんやが。やっぱり今年は雨が多かったからのォ。」と残念そうな川田さん。
そういって再度歩いて下山。
その数分間。
黒島の前方にあるという園地も見たい!とどういう風に、川田さんに切り出そうか、タイミングを考えていた。
車を停めていたところに着き、
「さ、もう時間もなかろう。元の場所に…」と川田さんが言った。
「あの、川田さん。もし川田さんさえよければ、その、出作りの極早生もぜひ見たいんですが!」
「いやいや無理やぞ。行って帰ってくるのに、1時間半はかかる。そんな時間はなかろう。」
「あ、いや…。」