西条の金光さんの事務所を離れ、向かったのは、北条というところにある畑。
尊敬する、というか、良いな!と思っている無茶々園さんが運営している野菜畑である。
山間を切り開いた、総面積5haの大規模農場で、本業ともいうべき柑橘類ではなく、野菜を育てている。
本拠地である明浜とは車で1時間半ほどかかる飛び地で、いわゆる有機農業を志す日本国内外の若者を受け入れている。
りょくけんとしては、大きな産地、例えば九州から北海道へと移行する前、いわゆる端境期の作物を育てるのに適切な場所なのだ。
事前に、明浜にいる担当者の村上さんに伺うと
「いやあ~山ん中ですよ。ナビに入れても出てこないような場所で…。」
「大丈夫です、微妙な時間になりそうですし、なんなら住所だけ教えていただければ、勝手に見ますから!」
そう言って、住所だけを伺い、現地に向かったのだが…。
案の定、分からない。
昨年の大きな台風の影響を受け、そこかしこがまだ復旧工事中で、未だ崩落している箇所もある。
途中の道はかなり細く、「これくらい慣れているぜ!」と思いつつも、対向車が来ると立ち止まってしまい、相手が下がったり、横に寄ってくれるのを待つのだった。
地元の方は、たいてい、車のナンバーを見て、”わ”の文字を見ると、譲ってくださる。
”わ”ナンバーは、レンタカーの印なのだ。
細い道を潜り抜けると、やっと広い道に出た。
カーナビによると、その道の脇を走る谷の一本向こう側が、農場の場所。
が、ちょっと雰囲気がない。
ラッキーなことに、住民らしき人がいらしたので、思い切って声をかけてみた。
「すみません~ちょっとお伺いしても良いですか?」
我ながら怪しさ満載なのだが、特段、怪訝な顔をするでもなく、対応してくださった。
「無茶々園という農業法人がやっている農場がこのあたり、小山田にあるんですが、ご存じないですか?」
「無茶々園の農場???聞いたことあるな。小山田は確かにここなんやけど、縦に割と長い地域でね。」
「風早農場って名前をつけているみたいなんですが…」
「風早っていうのは、このあたり、北条のことを昔はそういったみたいで、困ったな、実はこの家は実家で、僕自身はたまに来るくらいで、住んではいないんよ。」
お。ダメか。
「ちょっと待って、住んじょる人に聞いてみるから。」
そういって、ご自宅からスマートフォンを持ってきてくださり、地元のご友人に電話をかけてくださった。
時間は刻一刻と過ぎていき、空は赤くなってきていた。
その場で書いてくださった手書きの地図。 |