「海がきれいだな。」
「風力発電の風車が空の青と山々の緑と重なってきれいだな。」とか。
天塩町の看板を過ぎた途端、左側が海、右側が森、あるいは鰊(にしん)の文字、あるいは麦畑、田んぼだった風景が、変わった。
広々と切り開かれた場所には、緑の草が広がり、大きな大きな円状の白い物体が点在している。
牧草地だ。
白い物体は、“ヘイ”。
ヘイとは、牧草を刈り込み、丸め採って集めたもの。
干し草になって、冬の牛たちの貴重なえさになる。
草を刈りとり巻き取った時の”ヘイ”。 |
そこからは、ずっと牧草とヘイの風景。
おそらく秋の北海道を旅すれば、そこかしこで目にする風景だろう。
車の窓からは、牛のにおいもしてきた。
から以北、稚内までは酪農地帯で、牧場が多数存在する。
目的地は近い。
旭川空港を出て、4時間。
13時を少し過ぎたところで、ようやく、ようやく会いたかった宇野さんの牧場に辿り着いた。
少し遠くからでも、異彩を放つ真っ白な屋根のテントが目印になる。
白く敷かれた貝殻の道筋を進んでいくと、木の柵の向こうには牛が草を食んでいる。
レンタカーを適当な場所において、降り立つと、空気が違うのがわかる(空気を読む男、大森)。
先ほどのテントのほかに、たくさん建物も、車もあるし、牛もいるけれど、、、
―人気がない。
「はるばる来たけれど、もしかして、誰もいない?あれ?」
たちまち内心、不安になった。