2016年に品種登録されるや否や瞬く間に全国に広がり、押しも押されぬ人気品種となった。
非常に優れたマンモス品種で、主にその理由は3つ。
◎種がなく、皮ごと食べられる。
種がない、というのは品種の持つ特徴とは少し違う。
ホルモン剤であるジベレリンをコップに入れ、花が散った後に一房ずつ漬けていく。
ホルモンに触れたぶどうは受精したと思い、果実を結実させていく。
大きな粒のぶどうは、ある程度の大きさのところで、もう一度、ジベレリンに漬ける。
こうすることで、より大きな粒になる(肥大効果)。
このジベレリン処理には賛否があり、体に良くないのでは?とか、子供の時に食べると生殖作用に影響が出るのではないか?など様々だが、今のところ、確固たる説はない。
ジベレリン自体は、植物が自分で元々持っているホルモンなので、害はない、という人もいるが、直感的には、そこらへんの薬よりもずっと効果があるものを“過剰”に与えるのは不安だ。
ちなみに、ぶどう界の横綱、巨峰は、このジベレリン処理に向いておらず、やや渋みとか酸味が残るし、脱粒が激しくなる。
かいじやロザリオビアンコといった品種に至っては、ジベレリン処理をしても、種なしにはならず、種ができる。
皮が食べられるのは、少し前までは弱点だった。
ぶどうの品質基準のひとつに、剥皮性がある。
要するにぶどうの皮が向きやすいかどうか。
ピオーネは剥皮性が高く、巨峰も良い。
かいじは剥きづらい。
皮ごと食べられるのは、この剥皮性が低く、皮が向きづらいことの裏返しでもある。
逆転の発想で、じゃあ、皮ごと食べましょうよ、海外のぶどうのように、パリッとした食感で、皮ごと食べても気にならないものを、と開発された。
◎抜群の糖度。
何しろ、糖度が高い。
誤解を恐れずに言えば、どんな土地、どんな作りてでも、糖度16度以上になる。
風味の特徴は薄く、とにかく甘さが特徴。
◎つくりやすい。
樹勢が抜群に強く、生長も早い。
苗を植えて、2年目にはかなりの木の大きさになり、何房か収穫が可能になる。
そのため、端的に言って、栽培が簡単で長年の技術を要さない。
他のあらゆるぶどうが、かなり難しいのに、シャインマスカットは美味しいのに容易なのだ。
例えば、今年は山梨の黒ぶどうは、降雨と日照不足で、かなりの確率で病気にやられてしまった。
気温が高かったので、色も黒くならなかった。
同じ農家さんの、隣にある園地のシャインマスカットはぷりっぷりの、それはそれは見事なシャインマスカットで届くので、本当に不思議だ。
白ぶどうは、色が来なくても良いので、低温が必要でない。
そして、シャインマスカットは耐病性も優れているので、巨峰やピオーネが容易にかかってしまう病気にかからない。
本当に、作り手も食べる方にも嬉しい、時代に合った品種なのである。
強いて弱点のようなものを挙げるとすれば、差別化が難しい、ということ。
優れた産地の、優れた農家さんとネットワークを持つりょくけんの人間から言わせてもらうと、どんな産地でも美味しくできるぶどうは、なかなか、特徴を出しづらい悩みがある。
それは、最近、出店しているマルシェで、徹底的に思い知らされる。
他の出店者もこの時期はこぞって、シャインマスカットを前面に押し出す。
どんなに技術を費やしているシャインマスカットでも、結果的にあまり美味しさが変わらない。
こんなのは、ホント、贅沢な悩みなのだが。