朝8時45分。
いつもより少しだけ早く事務所にたどり着けた。
ほっとしたのも柄の間、事務所の扉の外で、「こんにちはー」と男性の声がする。
北海道、中富良野の生産者 北川さんだった。
北川さんは、率直に言って、いかつい。
体も大きいし、おしゃれなので、事務所の女性陣が迎えに出たところ、かなり驚いていた。
北川さん(左)、私(右)。会社の前にて。 |
「北海道から来ました、玉灯りでお世話になっている北川です~。」
9時ちょっと過ぎかな~なんて電話では言っていたのだけれど、少し早く着いたらしい。
「すみません、ちょっと早くなっちゃったんですけど。」
玄関口からすぐの応接室(兼 休憩室、兼 作業場、兼 倉庫)で、応対した。
二年ぶりくらいだろうか。
「ご無沙汰しています~」
とお互い挨拶。
北川さんは中富良野で、100ヘクタールくらいの畑で農作物を育てている。
じゃがいもも、玉ねぎも、アスパラガスも、珍しいところでは、チコリも育てている。
チコリは、サラダで食べるチコリも出荷するが、大部分は根の部分を乾燥、粉末にしたチコリコーヒーを販売している。
カフェインレスで、カフェイン中毒の方が飲むコーヒーの代替品だ。
察するに、コーヒーが大好きだけれど、カフェインの摂取を制限されている方や、その健康効果を期待して、チコリコーヒーを愛飲している方が、ある一定の数はいるのだろう。
安定した売り上げがある。
その一方で、育種にも力を入れており、種苗メーカーとタッグを組んで、品種を開発している。
玉ねぎの玉灯りも、その一つだ。
「実はですね…大森さん。長らく使っていただいている玉灯り。どうも採算が合わないみたいで、種苗メーカーさんが作らない、って言っているんですよ。」
「え~」
農家さんがわざわざ事務所にいらっしゃる、ということで、なんらかのマイナスの報告や相談があるのではないかと、ある程度、覚悟はしていたけれど、やっぱりその類だった。
玉灯りは、作りにくい品種で、その優れた品質の一方で、北川さんとあともう一軒、合計2軒の農家しか、栽培していないのだそうな、、、
「今年と来年分くらいの種はあるんですが、それから向こうの種は確保できないかもしれないんですよ。」
毎年10t取り扱っている。
残念だが、それ以上に取り扱いを増やすのは、弊社ではなかなか厳しい。。。
「それとですね。。。」
人手不足は、都会以上に厳しいらしく、どうしても人件費を上げないと、人手が集まらないのだそうだ。
除草剤不使用の畑は、マルチシートといって、ビニールシートも敷くし、その脇から生えてくる草を除草する人手がさらに必要だ。
平たく言えば、値上げを懇願された。
昨今、経済紙でも盛んに、値上げが報じられている。
政府もインフレを主導しているとはいえ、なかなかに厳しい。
本当は嬉しいはずの農家さんの来所。
楽しい農業談義もあったけれど、ちょっと空を見た。