“新玉ねぎ”という呼び名がある。
ややこしい名称のひとつだと思っている。
何をもってして、新玉ねぎと呼ぶか、今一つ、定かでないからだ。
出荷の始まった時期の、初期の玉ねぎのことを”新玉ねぎ”と呼ぶのだと思う。
けれど、その場合、ほぼ一年中、新玉ねぎが存在する。
日本は東西に長い列島なので、沖縄から始まり、九州、静岡、秋ごろに北海道と産地が北上していき、北海道が終わると、また九州方面の暖地へと戻っていく。
九州や東海地方までは、”新玉ねぎ”と呼ぶことが多いが、北海道の新ものは、まず”新玉ねぎ”とは青果業界では呼ばない。
ここに関わってくるのが、品種だ。
多くの野菜くだもの同様、玉ねぎにも早生種、中生種、晩生種が存在する。
九州などの産地は、早く新ものを収獲したいので、早生種が多くなる。
翻って、秋ごろに収穫を迎える北海道では、早生種は作らない。
早生種は、日持ちが悪く、九州の玉ねぎが始まるまでの数か月の供給をまかなう北海道には向かないのだ。
したがって北海道産の玉ねぎの多くは、日持ちの良い、固い晩生種となる。
晩生種には、”新玉ねぎ”の呼称を十中八九、使用しない。
だから、”北海道産の新玉ねぎ”はめったに見ない。
少し、黄色から茶色っぽい外皮で、果肉は白く、やわらかい、ジューシーな早生種の玉ねぎで、新年から初夏のころまでに九州~東北地方までの産地で、出回るのが、”新玉ねぎ”と呼ばれるジャンルと言えるだろう。