「そうそう、じゃあ、別荘行って、話そうか。」
「別荘???」
「そう、別荘作ったんよ。」としたり顔の山﨑さん。
奥にいらっしゃる奥様に向かって
「おーい。どういう風の吹き回しかわかんないけど、来てくれたから、ちょっと大森君と別荘行ってくるから~。」
ビニールハウスを出て、ぐるっと回って、ハウスの脇を登っていくと、何やら白い卵型の建造物?が見える。
白い物体の前には、ウッドデッキが組まれていて、くつろげるようになっていた。
「作ったですか?」
「うん、そうなんよ。海に投下されている不要なポッドが、競売にかけられていたんだけど、誰も買い手がいなかったみたいでね。引き取って改造したんよ。」
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”別荘”の内部 |
白い物体の正体は、すぐ目の前の守江湾に投下されているポッドだった。
中には電気も通って、ライトもあり、カラオケの設備もあった。
ウッドデッキから振り返ると、杵築が一望できる。
「あれが高崎山で、そこが杵築城、あっちは鶴見岳。」
守江湾の海が見え、その向こうの対岸には大分市も目にすることができる。
天気が良いとさらに先も見えるそうだ。
「この別荘で、仲間とお酒飲んだり、歌ったりね。」と山﨑さんも嬉しそう。
コーヒーを淹れてくださり、一口飲むと、
「そうそう。去年の5月ごろからね。」と山﨑さんが切り出した。
「手が思うように動かなくなってね。なんていうかなあ、しびれが来出して。」
結論を言えば、リューマチの発症だった。
リューマチは直らない。
「まあ、いくつか病院行って、薬の合う合わないがあるらしいやけど、たまたま一つ目の薬がよく効いてね。今は何とかやってますわ。」
最初は、箸も手から落としてしまうほどだったらしい。
「風呂に入っても、桶がつかめない。情けなかったねえ。」と回顧する。
話し込んで1時間半くらいたっただろうか。
日も沈み、あたりが暗くなり、先ほどの情景が夕暮れに染まった。
「次、またどっか行くんやろ?」
「あ、はい、大分市で人と会う約束があります。」
「すっかり暗くなっちゃったな。」
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手前にハウスが見える。奥の明るいところが大分市。 |
別荘を離れ、車に乗り込み、山﨑さんと別れた。
「じゃ、お天気にもよるけど、12月中旬には出ると思うから。」
「はい、楽しみにしてます!よろしくお願いいたします!」
楽しい話もあり、思うところもあり、夕暮れの海沿いの道は、いろいろな思いが心を巡った。