美島さんの工場から再び、幹線道路に出て、南に向かい、数十分で伊仙町に着いた。
徳之島の三つある町のうち、最も畑の良い条件が揃っている地域で、少し中に入ると、サトウキビ畑以外の多くの畑が存在する。
これは、風の向きが関係している。
天城町はもっぱら台風の通り道になり、風に強いサトウキビだけが安定して栽培できる作物。
伊仙町は、南西向きの畑が多く、風の影響が島内で最も少ないのだ。
「ここだ、ここ。」
舗装してある道は、陸橋のようになっていて、そこから2mほど下がったところに、かなり広い農場があった。
かぼちゃだ!
「最近では、ケントっていう品種が良くてね。12月末に収穫できる畑は、台風でダメだったんだけど、この作柄は今のところ、良く育っているね。」と、名古さん。
「下に降りてみますか。」
「はい、もちろん。」
舗装道路を右に入ると、赤土の農道で、ぐるっと回って、かぼちゃの畑にたどり着いた。
葉っぱが良く出ていて、一見すると、全く見えなかったかぼちゃが、プラスティック皿の上に横向きでのっかている!
「これ、すぐとれそうな大きさじゃないですか!」と聞くと
「いや、2月の半ばくらいかな。」
私が訪れたのは12月の半ば。
10kgで5玉サイズくらいの大きさになっているように見えるが、そうではないらしい。
確かに、ヘタの周りが青々として、コルク化には程遠い。
ここから充実してくるのだろう。
◎風の影響が少ない伊仙町であっても、一段、掘り下げられた畑で作ると、台風の影響は最小限にできる。
◎”皿”と言っているが、かぼちゃの下に敷き、”皿回し”という作業をして、まんべんなく日に当てることで、着色を良くしている。
これをしないと、土に接した部分が緑に着色せず、商品価値が下がる。
◎防草のため、すすきが一面に敷かれている。
◎18節に実をならせるようにしている。
◎互い違いに株を植え付け、かぼちゃ自体は一列になるように仕立てている。
こんな5つの点だけでも、きちんと栽培している、ということが伝わってくる。
なかなか、ここまで手をかけない。
というのは、この時期、北海道や本州ではかぼちゃが栽培できないので、国産かぼちゃであれば、なんでも高値がつく。
だから、きちんとこだわって栽培する人がいないのだ。
生産者の中井さんは、本職が消防士だそうで、訪ねた日にはお会いできなかったのだが、無人の畑を見ても、かぼちゃの出来には十分に期待できるもの、と思った。
「このまま、無事に収穫できると良いですね。」
「もう、(台風は)来ないでしょう。」と名古さん。
本当に2月が楽しみだ。