沖揚平には、もう一件、お世話になっている農家さんがいる。
お母さまにはお会いしたことがあるが、経営も栽培も中心の娘さんにお会いしたことがなかった。
夏作は、頼りにできる農家さんが一件でも多い方が良い。
黒石のご自宅を訪ねた。
ー例によって、1時間くらい彷徨ったが、、、
農家さんは、福士さん。
ちょうど、なんばん漬けの仕込みを終えて、煮沸殺菌をしている最中だった。
沖揚は、すこし特殊で、例えば、主産地である長野や北海道で、レタスが全くでない!と言われるときでも、出荷ができる。
逆に、長野がたくさんあるときには、「ごめんなさい、やませで全部やられました。」ということもある。
本州や北海道が台風で大打撃を受ける中、今年は、大いに助けていただいた。
広いリビングに座り、福士さんとお話しした。
福士さんはパワフルだ。
夏の間、何を作っているかというと、、、
レタス、サニーレタス、茎レタス、グリーンリーフレタス、だいこん、カラーのだいこん、にんじん、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、キタアカリ、ピーマン、ミニトマト、etc…
今年は枝豆も作っていたそうな。
「豆も面白いな。」と福士さん。
「お。」
「沖揚に行く途中に、大河原っていう場所があったでしょ。あそこでハウス栽培もやっだの。7月くらいにはそこで、もっと暑くなっだら、上で。そうしたら、うまくいったんだ。」
「じゃあ、夏の間、スナップエンドウなんて作れませんか?」
福士さんにお願いしたかった作物を、思いがけずスムーズに口にできた。
「スナップエンドウ?ここらでは(作ら)ないな。」
「へえ~」
「さやもたべられるやつでしょ。ここいらで、そういうインゲンと言えば、平さやなの。」
関東では、インゲンというと、丸いさやの、せいぜい10cmくらいのものを示唆する。
でも、北海道もそうだったが、青森でも、いんげんは、あの平さやの大きいいんげんのことを言うようだ。
モロッコインゲンとか、ジャンボインゲンといった品種がある。
豆野菜は、すこし難しい。
それは、収穫時期が集中してしまうこと。
そして、栽培期間が極端に短い。
2~3週間で終わってしまう。
そして、食べきれないくらい生って、終わってしまう。
だらだらと長い期間を供給してもらうのが難しい作物。
しかも、労働集約的で、収穫がとにかく大変。
ひとつ収獲したら、1kgにはなるだいこんと違い、一つでは数グラムにしかならない。
大規模な農家さんあればあるほど、意欲がわかない作物だと思う。
「私、ブロッコリーは得意なんだ。」
「え?」
もう一つお願いしたかった作物だ。
夏の間、お店で、幾度となく、尋ねられた。
“ブロッコリーないの?”
ブロッコリーは冬の作物である。
ただ、緑黄色野菜の中でも特に人気があり、一般的な量販店では、確かに置いてある。
りょくけんでも、北海道で何年間か挑戦したが、黄色くなりやすく、日持ちせず、しかも配送料もすごく高くて、厳しかった。
それを、目の前の福士さんは、”得意なの”とさらりと言う。
「7月の終わりから、秋口までずっと作ってるんだ。それを山盛りにしてみているのが好き。」
「じゃあ、来年はずっとお願いしますね。豆も期待しています!」
そんな、コアになる話以外に、福士さんにはいろいろ伺った。
昨年他界したお母さまのこと、ご家族のこと、沖揚のお住まいのこと、飼い犬との不思議な縁のこと。
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福士さんは沖揚平で、夏の間、お店もやっている。現在は冬眠中~ |
「なんか私ばっかり話してるな。」
そういえば、そうだ。
「あ、じゃあ、会社紹介を。。。」
なんて話していたら、すっかり日も沈んでしまい、外は真っ暗。
飛行機の時間もあり、お暇しなくては行けない時間になった。
シーズン中は、なかなかゆっくり話すこともできない。
畑を見るのが好きだけれど、こんな、ゆっくり話す時間があっても良いものだ。
来年の夏が楽しみになった。