「雨、ずいぶん降ったんだな。」
畑の、道に面した土は、ずいぶんとぬかるんでいた。
夜から朝にかけて、雨が降っていたようだ。
水はけが良く、不思議なもので、中に入っていくと、だんだんとぬかるみが減った。
緩やかに傾斜していて、排水が良いのだ。
中ぐらいまでに来ると、唯一、まだ果実がなっている木があった。
青林だ。
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青林。左右が対称の形にならない。 |
見事ななりっぷり。
「あっだ、あっだ」
特徴のある形の青林が、たわわに実っている。
「これこれ。左右対称になっていない感じが、いかにも青林ですね~」
と指差すと、その上になっている果実も指差して、奈良岡さんが、
「これなんがも、いがにも、青林でしょ。」と言う。
お尻が広がってすぼまっていない。
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青林。お尻が広がっている。 |
青林は、岩手県の農研機構の試験場で生まれた青りんご。
レッドゴールドの枝変わり(=突然変異)と言うが、にわかに信じられない。
レッドゴールドは赤い皮のりんごで、やや小玉。
完熟させると蜜が充満するが、冷蔵で2日かと持たない。
青林のように果形が荒れる、ということもない。
ただ、この形を除けば、蜜はほぼ100%入るし、果肉は硬く、日持ちもよい。
そして風味も良く、糖度が高い。
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蜜もよく入り、糖度も高い。 |
少し歩を奥に進めると、
「ごの辺りだな。」と奈良岡さん。
「青林はもうダメだと思って、フジの枝を挿したのがこの辺りの木です。」
不恰好な青林は、いかに味が良くても、販売に苦戦。
市場では受け入れられなかった。
「全部、フジを挿し木して、切り替えようとしたときに、大森さんがら電話があって…。」
当時、フジだけに傾倒したりんごの品種群を広げたくて、青林を栽培している方をずっと探していたのだ。
そこで、出会ったのが奈良岡さんだった。
「あるにはあるんだけど、、、」と少しばかりバツの悪い口ぶりだったのを覚えている。
結局、挿したフジの枝からも2~3玉のフジがなっているのだが、そのまま主幹は、青林で生育することになったため、今ではかなり大きな立派な木に育っている。
運命の木を目の前にして、そういった、時の巡り合わせを、不思議に思った。
■りんご(青林) 青森県産 約1kg(3玉前後)~ 1296円(税込)
https://www.shop-ryokuken.com/SHOP/42114.html