月初の水曜日。
野菜定期便の商品内容の切り替え日。
初入荷するものも多い。
天候や農家の出荷漏れや発注ミス。
様々な理由で、イレギュラーがある。
すべてを乗り越えて、毎週、定期的に野菜をお届けしている。
ホームページを少しいじった後、郵便局へ。
帰社して、通販のカタログ11月号の内容を考える。
「やっぱり、みかんかな。」
昨年の通販のデータを見たり、店のデータを見たり。
いろいろ思案して、ラフ案を紙にスケッチする。
そうこうしているうちに、終電の時間になった。
今日も走らねば。
三田線に、少し余裕を持って、”駆け込み乗車”した。
車内では、ノートPCを開いて、たまった仕事をこなしていた。
ビビビビビビビビ
急に、携帯電話から、けたたましい音が鳴った。
バイブレーションもブッブッブッブと震えている。
「緊急地震速報、強い地震に備えてください。
緊急地震速報、強い地震に備えてください。」
機械的なアナウンスが、携帯電話から流れた。
地下鉄は、まだ走り続けている。
「いよいよ来たか。」
走行中の地下鉄の中で、身を守ることなんて、限られている。
眠っていた乗客も、何が起きたのか、と険しい表情。
しばらくして、車両が停まった。
「ただいま、緊急地震速報を受信したため、緊急停車します。強い地震の可能性があります。手すりなどにつかまって安全を確保してください。」
緊急地震速報が出て、おおよそ1秒とか2秒の後に地震が来る。
すごい技術だが、心の準備くらいしか出来ない間合いだ。
アナウンスがあったときには、すでに30秒後くらい経っていたので、おそらく大丈夫だろうと思った。
3分くらい経った後、
「地震の規模も小さく、安全運転に支障がない判断したため、列車再開します。」
厳かに、地下鉄は再び動き出した。
千葉や茨城のほうで、震度4の地震。
大きなものでなくて良かった。
そう、それは良いのだが―。
日比谷駅を降りて、東京駅に向かって、また走った。
JRは、都営線とは接続を取ってくれない。
長い階段を下りていくと、JRの職員さんに「もうありませんよ。今日は定時に出発しました。」と冷静に告げられた。
ため息が出た。
誰かに愚痴も言いたい。
観念して、スリースターのついたタクシーに乗り、自宅に帰った。
8020円、とメーターに掲示されていたが、運転手さんが言う。
「じゃ、8000円で。」
「え、良いんですか?」
「はい、またお願いしますね。」
なんだか、とても得した気になった。