鹿児島空港を出て、2時間強。
空港周辺地域は、晴れ間も見えて、すがすがしい天気だった。
高速道路を降りて、海沿いの道路に入ると、どちらかと言うと、天気は曇り。
道路も濡れていて、落ち葉や枝などが散見され、それなりの風雨があったことがうかがい知れた。
「お、あれが、山川港か。」
指宿の中心を抜けて、道なりだったカーナビの指示が、久し振りに”右に曲がれ”となった。
ぐんぐんと山道を登る。
けっこうな傾斜を上がると、前方に特徴のある山が見えた。
まるで鬼が島。
その道を進むと、”玉手箱温泉”があり、遠くにはもうもうと湯煙を出す地熱発電所が見えた。
温泉の隣、脇道を入ったところに、今回の目的地があった。
かなり立派な骨組みのハウスが立ち並んでいる。
車を停め、人を探すが、見当たらない。
脇道のところにヤギがいたのを思い出し、いったん戻るような形で、手前のハウスに目をやると、働いている方が2名ほど見えた。
違うかもしれないが、尋ねてみよう。
そう思って、立派なガラス温室ハウスのドアを開けた。
予期しない”風景”があって、ドキッとした。
農業に携わるには少し若い女性がすぐ目の前に立っていて、奥で忙しそうに働いている方も、あらゆることに失礼だが、”農業にしては”若い。
扉を開けたのは良いが、一瞬黙ってしまった。
―カメラをぶら下げ、会社案内やメモ帳をポケットに突っ込んだ、明らかな不審者だ。
「あ、すみません、株式会社りょくけん東京の、大森と申しますが・・・。」
「鍵山です。」と、私に対して、極めて落ち着いた様子で、女性が答えた。
「すみません、変な時間になってしまって、、、思ったよりも道路が混んでいて。」
元上司である師匠からも、昼の時間は避けるように言われている。
しかし、その日の到着は11時40分と、本当に微妙な、”変な”時間になってしまっていた。
鍵山さんは、そんなことは気にも留めていない様子だった。
あわてて名刺を差し出し、りょくけんの説明もして、どういったコンセプトで野菜くだものを取り扱い、銀座店ではお惣菜を扱っていることなどをお伝えした。
ひとしきり、入口のところで立ち話をした後、鍵山さんに促された。
「じゃ、見てみますか?」