「真田幸村?」
「違いますね。」
「真田昌幸?」
「・・・。違いますね。しげ、なんとか。」
「真田信繁!」
「そう、それ!」
「信繁は幸村のことなんですよね。後世に、物語として語られるときに、なぜか”幸村”と名づけられたらしいよ。」
りょくけん松屋銀座店には、本業が役者のスタッフがいる。
9月は出演する舞台はない、と聞いていたが、1ヶ月前に突如、代役が決まった。
現在、舞台のため、お休み中。
週末に舞台を見たと言う店長から、そんな彼の配役が”真田幸村こと、信繁”であることを聞いて、いてもたってもいられなくなった。
私は、歴史が好きだ。
そしてやっぱり、男子なので戦国時代とか戦国大名が好きである。
大名といって良いのか、少し差し支えがあるが、真田幸村はかなり好きである。
400年も続く徳川幕府を作った徳川家に、二回も勝った、一地方の豪族だ。
祖父の代から武田家に仕え、武田滅亡後も、家をつないだ。
大阪夏の陣で、その命を、長男とともに絶ったと言われている。
同時に、徳川方にいた伊達政宗に、次男と長女を託し、自分の血筋を、仙台でつないだ。
そんな生き様が好きなんである。
彼は、前の舞台では、秀吉役だった。
幸村は、似合う気がする。
だが、その時点で、翌日が千秋楽。
あと2回しか公演がない。
3連休の最終日とはいえ、ずっと店に出ずっぱりだし、私にはやらなければならない仕事がある。
とはいえ、舞台はその日にしかない、、、
うーん、見たい。
翌日、出荷をてきぱきとやり、時間の制限のあるものをこなした。
14時30分。
千秋楽の最終の公園は16時。
場所は中目黒。
土地勘が無いが、1時間あればいけるか。
そう思って、すべて投げ出し、事務所を出た。