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産地研修2018 ~足立さん2~

足立さんのハウス。この中に熱帯風景が広がっている。 photo by hijiki ishiduka

足立さんのハウスは三連棟。
きちんと測っていないが、一反はある。

結構な広さのハウスに、出入り口はひとつ。
ガッと扉を開けて、中に入るのだが、13名はなかなか入れない。

入口はひとつ。  photo by hijiki ishiduka

眼前に広がる、ザ熱帯の風景は異様だった。

マンゴーの木は、200本あると言い、ところ狭しと植えてあり、はっきりといえば、道がない。
スペースもない。

13名のスタッフの先頭は、なんとか足立さんが見える位置まで行っているが、後方に構えていた私は、ハウスにすら入れていなかった。

別ルートをかいくぐって、なんとか現場に入った。

「俺は摘果はしない。ならすだけならす。」

ひとつの枝にひとつの果実が、宮崎では基本だが、、、  photo by hijiki ishiduka

マンゴーの交雑は、一苦労。
というのも、一枝に、小さな小さな花を8万個咲かせる。
そこに花粉をつけるわけだが、何しろ、8万あるので、人間の手では追いつかない。
一般的な=宮崎や沖縄では、ハエを使う。
ハチでは追いつかないためだ。

沖縄のマンゴー栽培のハウスの中で、白いウジムシがうにょうにょとマンゴーの木の下で動いているのを見たことがある。
そのときもぞっとしたが、正直、今思い出してもぞっとする。

気になったので聞いてみる。

「交雑はどうしてるんですか?」

「普通はハエらしいんだけど、俺はハチを使ってる。」

ハチではカバーしきれないからハエを使うと聞いていたので、少し意外だった。

「だから、交配して、果実がなった場合は、落とさず、ぜんぶそのままならす。もったいないじゃんね。」

でも、生長の過程で、弱いマンゴーは落ちて朽ちる。
良く地面を見れば、そこら中に、小さなマンゴーの実が落ちていた。

たくさんの小さな果実が落ちている。  photo by hijiki ishiduka

最後まで、木に残る果実は、わずかなのだ。

「今時期は、なった果実をこうやって紐でつるして、日が当たるように持ち上げる作業をしてる。」

さして暑いわけでもなく、この室温で、熱帯のくだものがよく育つものだ、と感じた。

ハウスを出て、選果場の前で、マンゴーについて講義を受けた。

「さ、質問があれば、何でも聞いて。」

口下手のような印象もあったけれど、なかなかどうして、饒舌にしゃべってくださった。

丁寧に説明してくださる足立さん。  photo by hijiki ishiduka

Q.1
「どうしてマンゴー作りを始めたんですか?」

A.1
「どうしてって、、、誰かマンゴーを作る気がないか、ってこの辺りの衆(=人)を集めただよね。その中で、景気が良さそうだったのが、俺だったみたいで。」

Q.2
「作り方は確か、自己流なんですよね?」

A.1
「そうだよ。誰も教えちゃくんなかったからね。自分で宮崎まで行ったりもしただけどね。最後はいろいろ試してみてね。全部、自分で考えた。」

Q.3
「苦労したことは、どんなことですか?」

A.3
「全部。全部だけど、そうだなあ。木をいざ増やそうとして、種をとって、植えたけど、芽は出すけど、途中で全部枯れちゃってね。そうしているうちに、接いでた木から新枝が出てね。それを増やすことにした。」

「へえ~。種からはできないんですか?」

「できんと思うね。種を植えたって話は聞くけど、、誰も成功したって聞かないじゃんね。もし種から増やせるなら、もっとここいらでも増えてると思うよ。」

Q.4
「みかんや柿も作ってますけど、何が一番つくっていて楽しいですか?」

A.4
「そだね。やっぱマンゴーだね。栽培も販売も苦労するけど、一番楽しいね。」

Q.5
「真っ赤じゃない部分がありますけど、大丈夫なんですか?」

A.5
「緑から変化して黄色になってれば、大丈夫だね。それよりも食べごろかな。ちょっとやわらかくなってから食べるのが一番だね。ちょっとやわらかいかな?くらいまで追熟させて食べると、ほんと、うまいだよ。」

Q.6
「他のマンゴーの品種は作らないんですか?」

A.6
「作らんね。」

「・・・あ、はい。」

最近私は、マンゴーのアーウィン以外の品種に”凝っている”。
それを意識しての質問だったかもしれない。
あえなく、否定されてしまった。

「さ、大森くん、時間だ。足立さん、ありがとうございました。」
タイムキーパーがお辞儀をしている。

「時間切れだって。じゃ、も、良いかな。」と足立さん。

もう少し、話もお伺いしたかったし、水晶文旦など他の畑も見たかったけれど、確かに、時間も押し迫っていた。
足立さんのハウスから、浜松駅までは、車で40分くらい。

浜松の帰宅ラッシュの渋滞にひっかかれば、優に1時間かかってしまう。

「足立さん、すみません、今日は、本当にありがとうございました。」

再び、永田次郎さんの車と、10人乗りのハイエースに分乗して、浜松駅に向かった。
幸い、渋滞にも巻き込まれず、事故もなく順調に駅についた。

予定していた、17時11分発の新幹線ひかりにも乗車でき、13名、無事に帰京した。

強行軍ではあったものの、生産者5軒、畑は10箇所を、数時間のうちに廻ることができた。

会社が培ってきた生産者ネットワークを少しでも、販売や調理のスタッフさんに知ってもらえたら、そしてその先にあるお客様に還元してもらえたら。

それだけで、満足この上ない。