事務所内の空気が薄いな、と感じて、扉を開けて、外に出て、思い切り伸びをした。
仕事に集中力が出ないときは、ストレッチをすると良いらしい。
ふっと気を許しているところに、散歩している近所のお母様に声をかけられた。
「ここの会社はいったい何を売っている会社なの?」
道をはさんだ向こう側から、不意に。
「え、あの、野菜を売っています!」
「へえ~。」
聞こえているか聞こえていないか良く分からなかったが、
「こないだ、入学式やってたでしょ。」
「あ、いや、”入社式”です。」
「あらやだ、そうね。」
バス通りから離れ、一本裏に入った箇所に、事務所はある。
ヤマト運輸さんなどのトラックも停めやすいだろうから、と裏通りを決めたのだが、意外と昼間は人通りもあり、扉に貼り付けた「入社式」の看板は、ある程度、人目についたようだ。
もしかしたら、山菜ロッケンローラーの音も聞こえたのかもしれない。
少しでも、近所の方に、我が社について興味をお持ちいただいたのなら、それはそれで、入社式は成果があったのかもしれない。