「静岡でも水晶文旦作ってるんですか?」
店頭で、そんなご質問をいただいた。
水晶文旦の一番の産地といえば、高知県だ。
高知では、高知のくだものをお世話になった方に贈る、というのが習慣づいているらしく、産地としてくだものが根付きやすい。
ただ、時期はもっと早く、11月とか12月のお歳暮の時期に収穫できるよう、ハウス栽培が多い。
その時期の高知の水晶文旦は、ハウス栽培なので、外観も良く、大玉で、糖度も高い。
1玉1000円以上して、2~3000円で販売されていることも珍しくない。
文旦類は、グレープフルーツにイメージされるように、そこまで糖度が高いイメージはなく、酸味だったり、ビタミンCだったり、苦味だったりが、まずはイメージされる。
そんな、文旦類の中にあって、水晶文旦は、一番食べやすく、糖度が高い。
苦味も少ない。
透き通るような、水晶のような果肉の美しさから、その名が付き、一番の産地である高知では、もっぱら贈答品として扱われる高級柑橘なのだ。
ただ、悲しいかな、静岡県産のため、産地ブランドではなく、しかも露地もののため、りょくけんの水晶文旦は、お歳暮時期に出回る高知産の水晶文旦ほど、高価でなくなる。
きちんと完熟させているので、糖度もしっかりと高く、外観やサイズは適わないけれど、とても美味しい。
畑は、静岡の浜松の山の中。
大平(おおいだいら)と言う、少し標高が上がったところにある。
傾斜の具合こそ、滝沢の渥美さんの畑に及ばないが、標高がより高いために冷え込みがきつく、品質の良い柑橘や柿が収穫できる、産地ブランドのひとつだ。
生産者の足立さんは、そんな環境で、マンゴーも手がける、くだもの農家。
「何でも人と違うことがやりたくってね。」と日に焼けた顔で笑う。
いつもは無愛想な足立さんが、そのときは、にかっと笑って、心が和んだ。
水晶文旦。
あまりメジャーな柑橘ではないが、この時期であれば、さほど高くない。
ぜひ一度試してほしい。