今、柑橘のおすすめは?と聞かれれば、諸条件あるのだが、黄金柑をおススメしたい。
手で皮がむけるほうがよければ、不知火(=デコポン)だったり、「酸味がないほうが!」といわれれば「はるか」だが、総合的に、黄金柑は良い。
初めて出会ったときには、なんだこの小さい黄色の柑橘は?と思ったものだが、師匠たちが、黄金柑は4月くらいまで樹で熟させると、美味しい、と口をそろえていたので、渥美さんのところに、なっているのを見つけたときにはびっくりした。
それまで、渥美さんは黄金柑を2月中旬には収穫し、予措をして、酸味を抜いて出荷していた。
「4月中旬まで樹にならせてみてください。」と懇願し、翌年実現。
酸味もあるものの、糖度も高く、外観はくすんだ感じの色合いだったが、かなり食味が良い。
銀座店でも、池袋店でも、好評で、かなり売れた。
その翌年は、渥美さん、再度2月に収穫してしまった。
「外観が悪かったし、落果しちゃうもんで。」
渥美さんの畑は滝沢というちょっと山の中だ。
場所によってはかなり冷え込む。
滝沢の段々畑。 |
冷えると、生理落果といって、果実がかなり落ちてしまう。
そうすると正品にはならないから、お金にならない。
「そうですか、、、」
案の定、味がよくない。
その年は、期待に胸を膨らませた販売のスタッフさんもだんだんとモチベーションが落ちて、お客様にも「去年は美味しかったのにね。」と言われてしまい、あまり売れなかった。
渥美さんも、それは感じていたようで、「やっぱり美味しくなかったから、大森さんの言うことを聞くことにしたよ。」と、翌年はきちんと4月中旬まで樹にならせてくれた。
出始めは少し酸も強いが、糖度も高く、美味しい。
「なにこの小さい柑橘!」
「is this lemon?」
「これも金柑なの?」
かなしきかな、マイナーなので、思ったようなお言葉はまず最初にはいただかないが、ぜひくだものがお好きな方には味わってほしい柑橘だ。