少し途方にくれたころ、携帯電話が鳴った。
「すみません、電話出られなくて、、、」
「いやいや大丈夫、今どちら?」
折り返し電話が来た、ということは、不参加あるいは入社拒否ではない、と焦りつつも少しほっとした。
「えっと会社の近くですが、どこかといえば、、、もう行って良いんですか?すぐ行けます。」
「はい、ぜひいらしてください。」
ふっと、頭をよぎったことがある。
入社式の開始時間を9時半にするか10時にするか、迷ったのだ。
もしかすると、誤って時間を伝えたかも・・・!
そう思いつつ、「とにかく新入社員はいらっしゃる。」頭を切り替えて、社長挨拶の原稿に目を向けた。
「近くに来ているのなら、ちょっと見てきますよ。」
フットワークの早い社員が、周りを見に行ってくれることに。
少ししてから、無事に新入社員さん来社!
もはや社長挨拶の紙面は頭に入らなかったが、来てくれたことに、心底、安堵した。
荷物を置き、全員が着席。
「じゃあ。」と落ち着いた振りをしながら、司会進行のスタッフさんに目をやった。
「一同、ご起立願います。」
特段、リハーサルもしていないけれど、きちんと全員が立ち上がった。
「只今より 株式会社りょくけん東京 平成30年度入社式を行います。一同、礼。」
みんな、お辞儀のタイミングだったり、角度がきれいだと思った。
「一同、着席。」
そして司会進行。
嫌がっていたわりに、上手だし、雰囲気をきちんと出している。
私が開始時間を間違えて伝えたことなどどこに行ったか、というほど厳かなスタートになった。
「それでは社長より、挨拶をいただきます。新入社員、起立。」