「午前中は絵売って、午後は野菜売ってます!」
そのように、お客様に自己紹介する齋藤さんは、パワフルだ。
先代の譲さんが、不慮の事故で亡くなって、右も左も分からず農業に飛び込んだ。
それも、ご実家に戻る前は、東京で美大に通っていたのだから、一大決心である。
角館(かくのだて)と田沢湖の間くらいに位置する仙北市西木町。
自然豊かな、山あり谷あり川ありの田舎である。
先代は林業が本業で、きこりをやっていたのが転じて、原木の生しいたけを作るようになった。
土地がよいのか、腕がよいのか、他に栽培した野菜も何でも美味しかった。
その野菜の部門を受け継いだのが齋藤さんである。
昨年も、いろいろ面白いものを作っていた。
長ネギが主力だが、エアルームのトマトだったり、オレンジ、黄色、紫のにんじん。
はたまたルタバガや花豆、パンダ豆、ソラマメ、じゃがいも、かぼちゃ、玉ねぎ、などなど。
よくもそんなに作るものだ。
本人いわく
「面白いから作るんですけどね~。儲からないものばっかり作ってます。」
それは大変だ。
とはいえ、表情は明るい。
畑近くを通る地元の列車には、いつも手を振るという。
齋藤さんの明るい性格が、察せられる。
ここのところ、毎年、この時期になると、銀座店で販売をしてくださる。
角館のマルシェにも参加しているので、販売接客も慣れていて、年々上手になっている気がする。
今回は、花豆、パンダ豆、いぶりがっこに、渾身の大型原木生しいたけ「絹」もお持ちになった。
いぶりがっこのデザインがまた変わっており、
「これは、やっぱり齋藤さんがデザインしたんですか?」と聞くと、
「はい、いちおう。こういうデザインも2年に1回は変えようかなあ、と思って」と齋藤さん。
そんな話をしていたら、すぐに、お客様から話しかけられる。
人柄の良さが伝わるのだろうか。
齋藤さんは、絵描きも同時並行して続けている。
今回、上京したのも、絵の展覧会があったためもある。
午前中は、その絵を販売していたそうな。
お昼をはさんで、松屋銀座で野菜を売っている。
すっごいな~と思わずにいられなかった。