「清見(きよみ)」1949年登録 |
たくさんのオレンジみかん(=タンゴール)が世に出るのに、実に大きな役割を果たした柑橘がある。
清見(きよみ)である。
宮川早生みかんとトロビタオレンジの掛け合わせで、香りはオレンジだが、食感や食味はみかん。
果汁が多く、果肉がやわらかいので、手で皮をむくのはやや難しい。
種も入る。
香りや、果汁の多さ、果肉の感じはすばらしいが、取り立ててものすごく美味しいかというと、実はそういうわけでもない。
おおよそ、糖度は11度くらい。
それが、不知火や、甘平など、数多くの優れた高糖度オレンジみかんの親になっているのは、単胚性という特徴を有するからに他ならない。
多くの柑橘が、多胚性という特徴を持つ。
交雑してできた種子の中の「胚(はい)」という組織があり、これがやがて樹になり、実をならせる。
多胚とは、この胚が複数あることを指す。
そして、多胚性の胚の多くは、めしべの特徴を持ち、せっかくできた種子を撒いて育てても、母親と同じ果実になってしまう。
言うまでも無く、撒いて育ててからでないと、新種かどうか、結果は分からない。
それが、単胚性であればどうか。
種子の中にはひとつの性質しかなく、清見を親にすることで、子が、もう片方の親の特徴を併せ持つ新品種になりやすいのである。
その系譜を見ると、驚くなかれ、ほぼすべての高糖度オレンジみかんに清見がかかわっていることが分かるはずだ。
デコポンこと、不知火は、ポンカン×清見。
はるみやせとみも同じ親、つまりポンカン×清見。
はれひめ=宮川早生×(オセオラオレンジ×清見)。
愛媛果試第28号(通称;紅まどんな)=南香×天草 天草=ページオレンジ×(興津早生みかん×清見)
たまみ=ウィルキングオレンジ×清見
甘平(かんぺい)=ポンカン×西之香 西之香=トロビタオレンジ×清見
せとか=マーコット×(アンコール×清見)
ここまで清見がかかわってくると、すごい!としか言いようがない。
品質もさることながら、それだけ、交雑がしやすかったということなのだろう。
とはいえ、ひとつの品種を作りあげるのに、20年はかかる、というから、その苦労は、計り知れないが、、、