「すみません、間に合いませんでした。」
電話口で、福岡の石井さんが言った。
「これから空港まで行けば、間に合うらしいんで、走りますか?」
石井さんの畑のある宗像(むなかた)から、福岡空港まで、高速を使っても小一時間かかる。
「いや、さすがに良いですよ。大丈夫です。どのくらいの数があるんですか?」
結構な数の回答だった。
ノーマルにいつも販売できるよりも倍くらい。
「大丈夫です。がんばって販売します!」
「本当に大丈夫ですか?本当に走りますよ。大丈夫ですよ。」
「いや、本当に大丈夫です。がんばって売ります。」
年末の苺の話だった。
福岡から、通常中一日で、東京のお店に届く。
それをタイム便という翌日に届くシステムを使って、12月30日に着けようという目論見だったが、締め切り時間があり、かなわなかった。
31日に、通常の倍の量が届いてしまう。
1日は店休日なので、実質、31日の大晦日にすべて販売しなければならない。
大晦日ということもあって、18時閉店といつもよりも営業時間が短い。
一日で販売しきるのは少し難しいかな。
正直そう思っていたが、蓋とはあけてみなければわからないものである。
勢いよく、入荷量が全部販売できた。
そんな大晦日。
再び石井さんから入電。
「どうでした~?大丈夫でしたか!?」
のどもと過ぎればなんとやら、で、きれいに、あっという間に完売していたので、ちょっと忘れていた。
「あ、ぜんぜん大丈夫でした。お年賀の需要もありましたし、外国の方も多かったので!」
「本当ですか!良かったです!いやあ、心配だったんですよ。タイム便間に合わんかったんで・・・。」
「いやあ、まったく大丈夫でした。」
「今日も荷物あったんですが、送って大丈夫でしたか?」
「1月2日着分ですね。大丈夫です。ありがとうございます!助かります。」
他愛もないやりとりかもしれないが、そうやって心配してくださる農家さんとの間柄って、なんか良い。
がんばって販売します!