クリスマス商戦の激戦のさなか、支払いの関係で、銀行に行かなくてはいけなかった。
店を少し抜けて、名札こそはずしたものの、制服のまま、銀座の街に少し出た。
すでに真っ暗で、イルミネーションが煌々ときれいだった。
どこも幸せそうな家族やカップルでいっぱいだった。
そそくさと人と人の間をすりぬけていったときのことだった。
5人のご家族の脇を早足で通り抜けようとしたちょうどその瞬間
「そうだねえ~サンタさん本当にいると良いね~」
と少しほろ酔いのお母さんが、小学生くらいの娘さんに言うのが聞こえた。
「あ~!」とお母様が私を指差しているのがわかった。
「サンタさんだ!」
私は接客業。
相手の希望に応えてこそ。
振り返ってにこっと手を振った。
「本物のサンタさん!」
母娘で、はしゃいでくださった。
もちろんお酒の影響もあったのだろうとは思う。
「すごい、本物だ~ よく似てる~」
と不可思議な会話が後ろから聞こえてきた。
「違うから。あれは店員さん!」と至極もっともで冷静なお父さまの声も聞こえてきた。
「え~でも似てるよぉ。雰囲気とかさぁ」
クリスマスは、サンタクロースの例の帽子をかぶって接客に当たっている。
いつものようにマスクもしているから、似ているといわれても、めがねと目しか見えないはずなのだが・・・。
あ、この白いマスクがあのひげのような雰囲気を醸し出しているのか。
などなど。
なんにせよ。
タイミングだったり、雰囲気だったり、ほろ酔い気分だったり。
さまざまな影響があったとは思うが、なんとなく人に幸せを与えられたようで、うれしかった。
クリスマスには、不思議な力がある。
着用していたサンタ帽 |