りょくけん東京

りょくけんだより
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はるか。

私は、りんごの畑に来た時には、葉の色を見るようにしている。

肥料過多で、窒素分が多いと、葉の色が濃いのだ。

りょくけんが好むのは、淡い緑色。

「あ、それは違う。うちのじゃないです。」と私のつぶやきに間髪入れず小林さんが言った。

手前の2列目までが、よその畑。奥が小林さんの畑。葉の色が違う。

「この堤防の区画から向こうは隣の人の畑。もう向こう10年は肥料入れなくて良いって言ってるんですが、いうこと聞いてくれなくて。」

”隣の人の”畑は二列ばかりで、その向こう側にある小林さんの園地の葉の色は薄かった。

ほっ

「ここです。はるかは。ここと”あいか”を挟んで向こうの2本。」と教えてくれた。
「ここが本当にピンポイントに雹害にあっちゃって。正品はもうほとんど取れなそうなんですよ。」

はるか

「はるかなのに、けっこう大きいですね。」
はるかは、小玉なのが特徴だ。
「はるかは、年数、5年以上経って、こなれてくると、玉サイズが落ち着いてくるんですよ。32玉とか36玉で出てきます。」
「この木でどのくらいの年数なんですか?すごく木が細いですけど…?」
「それが技術なんですよ。へへ。」と小林さんが笑う。
「もう10年は経ってますよ。」
「分かった!果実に栄養を送りこむように、樹をあまり太らせないように栽培しているんですか?」
「う~ん、というより、果実をきちんとならせるように育てると、木があまり太らないんです。」

よく見ると、すこし高い木でも、すべて細い。
そんな木でもたわわに果実をならせている。
折れないように支柱を立てているのは、そのためか。

枝の剪定と葉面散布といって葉に直接行う施肥の組み合わせで、「木が細くとも果実がなる」という風にできるようだ。

「でも、まだちょっと酸味が残っていて、収穫を悩んでいるんだよな。」
はるかをもぎ取り、ポンと私にくださった。

食べて、糖度を測ると13.7度。
13度超えると、優秀なのだが、最近の品種では16度を超えるものが多い。
はるかもそれらの高糖度りんごのひとつ。
酸味が少しまだ勝っているか。

「うんやっぱりまだだな。蜜は入っているけれど、もう少し置いた方が良い。。」と小林さん。

あいかの香りやシナノホッペもあり、私としてはほかの列の木も興味津々。

小林さんがふと立ち止まり、おもむろに収獲し、私のほうにポンポンと手渡してくれた。

「はい、これ取り忘れでまだ残っちゃってました。”もりのかがやき”。もうこれも切ろうと思ってるんですけどね。食べてください。」

小林さんの品種リレーが最先端を行っているので、すごいな、と思ったばかりだったが、取捨選択も早い。
もりのかがやきも、最新品種で、りょくけんでも昨年から取り扱いを始めたばかりである。
理由は、同じ時期に、シナノゴールドがあり、そちらのほうが優秀だと判断したため。

「今、注目している品種はなんなんですか?」
「長果25号。」
即答だった。

「うちは濃い味のりんご品種ばかり選んでいて。おおよその9月~12月のラインナップが決まってきた中で、早い品種=つがるよりも早く収穫できる甘いりんごを期待していて、それに応えるのが長果25号かなあ、と思っています。あれが始められると、8月15日ごろ、お盆のころにはもう収穫できるようになりますから。」
「へ~」

圃場を後にして、事務所で、また少し話し込み、あっという間に10時になった。

「すみません、10時には出発しなくてはいけないんですよね?」
「はい、紅玉をジュースの加工場に持ち込む約束をしてまして。ここから片道、松川は2時間くらいかかる場所なんですよ。」
「松川?ましのさんですか?」
「ああ、そうです。」

松川のましのさんは、もっとも古いお付き合いのあるりんご農家さん。
つながるところでつながるのだなあ~とふと思った。

「今日は早朝からご無理言ってスミマセンでした。でも有難うございます。僕もまた頑張ります。」
そういって、小林さんの畑を後にした。

「まだまだやることいっぱいだな~」

次に向かうは長野市!

もりのかがやき。

後日談だが、ポンポンと渡された、この、もりのかがやき。
自宅に帰って食べたところ、ものすごく美味しく…。
大玉で、”はるか”に似た風味があり、ややジュース分が干上がった感じがあるけれど(熟度が上がっているため)、果肉がしっかりして、糖度が17度を超えていて本当に美味しかった…!

切るのかあ…!