少しだけ高いところに立って、辺りを見渡すと、ぽつりぽつりとぶどう棚が見える。
でも、息子3人を抱えて散策するのは、なかなか労だ。
と思っていると、十字路の向こうから、軽トラがやってきた。
中に座っている女性が、角に停めてあった私の車を見て、「はてな。」という表情をしている。
「お。」
近くに駆け寄り、空いていた車の窓に向かって
「塩島さんですか?」と聞いた。
「はい、そうですよ。」
きた!
「大変ご無沙汰しております。りょくけんの大森です。」
「あらあ、こちらこそご無沙汰してます。何年もお取引きいただいてとんだ失礼を。」
塩島さんは大変丁寧な方。
8年前にお会いした時には、すでに、日が暮れており、その中で飛び込みで、この選果場を訪ねた。
暗い中、選果場でお相手いただき、レインボーレッドキウイのお取引をご快諾いただいた。
本来は、業者さんには卸さない主義なのだが。
「ちょうど、収穫の終わったぶどうの防除に行って、着替えにかえってきて、それからりょくけんさんに送るキウイの収穫を、と思っていたところでした。」
車を降りて改めてご挨拶。
「突然すみません。ちょうどキウイも始まるところでしたし、山の芋のこともお伺いしたかったので。」
「とーちゃん、ぶどう狩りしたい~」
あ、あのいや…。
「山の芋!あ、ちょうど兄の家があそこで、いるかしら?ちょっと見てきます。」
塩島さんの選果場の道を挟んでちょうど前に、お兄さんがお住まいだった。
あ、じゃあ、やっぱり。
「健二さーん」と塩島さん。
「あ、いたいた。」
ちょうど、外出するところだったようで、次男である健二さんが、いらっしゃった。
話は一カ月くらい前に遡る。
塩島さんから、お兄様が山芋を作っていて、りょくけんさんの話をしたら、ぜひお取引をお願いしたいので、連絡させてくれ、と言っている、というメールをいただいた。
山芋は、実はあまり取り扱ったことがなく、気になるアイテムであったので、ぜひお話をお伺いしたい、と返事をしたところ、数日と立たないうちに、健二さんからお電話をいただいた。
「ホームページを拝見したところ、本当に良いお仕事をされているな、と。おそらく、全国の私と同じような考えを持つ生産者と、たくさんお取引をされているという印象を受けました。」
「あ、いや、そんな…。」
そこから20分ほど。
山芋の話を電話にて伺った。