「かわいいですよね、ムキになって。」
少し間を開けた後、
「日本にまだこれだけ熱心に、一生懸命働く人がいることを知れて、嬉しいんです。」
ユニクロ所属の私には驚愕の言葉だった。
ユニクロは、良くも悪くも、柳井さん次第で、柳井さんが右を向けば、全員が右を向かなくてはならず、かつ全員が向いていた。
その影響力は、ローソンの現代表取締役で、当時ユニクロの社長であった玉塚さんですら、その社長職を、2年程度で退かざるを得ないほどだった。
柳井さんがやめろ、と言ったわけではない。
だが、周りが許さなかった。
カリスマである柳井さん以外の言うことは、社内では受け入れないような風土があったのである。
そんな絶対的なカリスマに対して
「かわいいですよね」
と言い放つ人がいたのだ。
以前から、食に興味のあった私は、そんなプロモーションビデオにも惹かれて、ファーストリテイリングの子会社FRフーズへ転籍した。
永田農法の野菜を売る会社に移ったのである。
心のどこかで憧れていた永田照喜治さんにも、すぐに会えるに違いない、と期待していた。