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コラム

「一億円かけて一銭ももうからない。」

百貨店業界の雄である、三越伊勢丹グループ。
りょくけんが出店する松屋銀座の隣に三越銀座があり、日本橋三越もあり、伊勢丹新宿本店がある。
この三本柱は、正直言ってすごい。

もともと伊勢丹は、銀座のお店がほしくて仕方なかったと聞いている。
当初は松屋銀座とのかかわりを深くしていった経緯があったが、一転、老舗中の老舗である三越グループと手を組んだ。

関東出身の私から言えば、百貨店といえば、三越か高島屋だった。

その三越と、東の横綱と言われた伊勢丹が組む。
どんな相乗効果が出るのか、非常に興味があった。

私から見ると、経営的に安定していたそれぞれの新宿本店と日本橋本店はそのままの経営路線で、不採算である地方店を縮小しながらも、三越伊勢丹の本店として三越銀座の大規模改装に着手。
駐車場スペースであった建物をつぶし、売場として増床。
地下と2階から上を続きにし、1階部分だけ道路を残すという離れ業で、隣から見ていて脅威以外の何物でもなかった。

が、数年たった今、のぞいてみると、その効果は限定的であるように見える。
集客は確かに多いが、買い上げ率はさほどでもない。
また、増床した奥の部分は集客の恩恵を受けていない。

そこに来て、前社長が突如の辞任が発表された。
私も経営者となった今、本当に注目するニュースだった。

・不採算だった店舗を閉めたことで、既存社員のやる気をそいだこと。
・閉めたお店の人員に手厚い保護を行ったことで、コストがかなりかかってしまったこと。
・旧三越と旧伊勢丹の文化の違いが埋められなかったこと。
・メディア先行で発表し、社内調整が終わっていなかったので、社内の不協和音を招いたこと。
・社長があまりにも現場の意見を優先し、中間管理層を軽視してしまい、うまく組織が回らなかったこと。

うまくいかなかった理由はこの5つに集約されるのではないだろうか。
そして、新社長が先日、会見で口にしたのが

「恥ずかしながら、一億円かけて一銭ももうからないことをしていた。」

との発言だった。

事業多角化への投資に対してなのか※
日本橋や銀座店への華美な装飾の件なのか
退職していく方々への厚遇の件なのか※

候補として考えられるものはいろいろある。

同じ経営者としては耳に痛い言葉が続く。
規模の大小はあるものの、弊社にも似たような例はいくつもあるのだ。

日本を代表する企業グループの行方を、この難局をこれからどう乗り切っていくのか、注視して参考にしたい。

※百貨店ブランドを生かした新規事業を、ということでエステやレストラン事業に参入している。
※自主退職の方への退職金上積み、解雇されるパートさんたちの通勤経路を調べ、再雇用先を紹介するなど手厚いフォローを行った。