戦後のひらがな表示改正まで、shouという発音は、”しやう”あるいは”せう”等と表記された。
東京の十条は”じゅうじょう”ではなく”じうぜう”と書いたし、蝶々はちょうちょうではなく”てふてふ”と表記した。
醤油は、正式には”しやうゆ”と書いたが、”せうゆ”の表記も許容されたようである。
それゆえに、醤油は、日本伝統の基本調味料の五つを表す”さしすせそ”のうちの「せ」に充てられる。
うまくできたものである。
醤油の基本的な製造工程は、”本醸造”と言って、大豆と小麦に麹を加えて発酵させ、塩水と混ぜて1~2年かけて熟成させる方法である。
時間はかかるものの、醤油のうまみはそのように作られる。
残念ながら(すみません)、他にも二つの方法がある。
”混合醸造”と”混合”の二つの方法で、両者ともに、「アミノ酸液」を使う。
アミノ酸液は、乱暴に言うと、大豆に塩酸をかけて分解し、うまみであるアミノ酸だけを抽出したあと、水酸化ナトリウムで中和させた液体である。
混合醸造は、大豆と小麦が発酵した「もろみ」にこのアミノ酸液を加えてから熟成させる。本醸造に比べて早くできる。
混合法は、発酵の終わった醤油に、アミノ酸液を加える。
加えてから醸造させない違いがあり、さらに短期間でできる。
いずれもアミノ酸由来の”うまみ”や”あまみ”が強くなるようである。
1~2年かけて醸成させる方法よりも、半年以上早く短期間で製造できるのが、後の二つの方法の利点である。
”うまみ”は化学的に、作ること=再現することが可能な時代なのである。
ただ、混合醸造も混合法の醤油は、関東では、まずあまり見かけない。
多いのは、四国や九州だ。