小出 宗明氏 |
「日本で中小企業の割合はどのくらいかご存知ですか?」
巣鴨信用金庫さんが主宰するセミナーに参加した際の、冒頭の質問である。
F-biz(えふびず)という中小企業支援を行う公的機関のセンター長で、”カリスマ中小企業診断士”の小出氏が、板橋までお越しになり、実績とアドバイス例を紹介してくださった。
一言で言えば、小出先生は、凄い。
F-bizは、静岡県は富士市にある中小企業支援機関の先駆け。
なぜに富士市?と疑問符が付くかもしれないが、富士市は、水が豊富で、紙パルプ工場のメッカであり、大手企業の工場がいくつもあり、繁栄していた。
その大企業の合間を縫って、中小企業があまた存在していた。
が、コストダウンを図り、工場が海外に移転していく中で、企業が減少していってしまった。
これに危機感を覚えた富士市が、当時静岡銀行に所属していた、小出先生に、白羽の矢を立てたのである。
「困っている企業が、無償で相談にのってくれる支援機関、要は公的なコンサルなのに、行列ができないのはおかしい。」
「何かに問題があり、中小企業の社長さんたちから、行っても無駄だ、頼りにできない、と思われているのだ。」
立ち上げから16年。
数万社と面談し、V字回復させた中小企業は数知れず。
決算書は見ない。
じっくり話を聞いて、中小企業の小回りの良さや、特有の技術力を見抜く。
それまで社長が気づかなかった強みを気づかせ、社長に判断させる。
小出先生の持つ企業ネットワークにつなげるときはつなげ、ベバレッジ的に回復をさせる。
2時間程度の中で事例をいくつも教えてくださった。
例えば、
老舗の缶詰加工場。機械が古く大企業の大規模ロットの注文に対応できない。
→いやいや何を言っていますか、現在は、農家自身も加工品を作りたくて仕方がない。
でも、引き受けてくれる小ロットの加工場が無くて困ってますよ。
◎どうやって加工場を締めようかと相談に来たのに、そこからその加工場もV字回復。
例えば、
金型の優れた技術を持っている。つなぎ目無く、一体型の金属フレームを作る技術がある。短期間で作れるメリットがあるけれど高いから売れない。
→試作をしてほしいメーカーがごまんといます。短期間で一つの試作品ができることをアピールしてみては。
◎試作品を臨機応変に、短期間に作ってほしい企業から声がかかり、V字回復。現在は、新規顧客はお断りするほど、繁盛。
例えば、
超こだわりの着物店。常連さんは多い。ただ、貸衣装が定着し、新規顧客がとれない。
→常連さんがついている、ということは、品物は間違いなく良いに違いない。じゃあ、そのこだわりをアピールしましょう。毎日SNSで発信してください。そしてそのこだわりをずっと紹介してください。
特段、最初は効果がなかった。だが、次第にアクセス数が増え、都会の百貨店にはないものも、ここにはある、ということが知れ渡るようになり、新規の若い世代のお客様も来てくださるようになったという。
「まだまだ話したいんですが、もうそろそろ時間なんで」と締めくくられた。用意された資料はまだまだあった。
f-biz公式サイト↓
http://www.f-biz.jp/
その実績を国にも認められ、F-bizをビジネスモデルにして、各地に支援機関ができ、指導的立場となり、F-biz 自身が視察される対象になった。
かくいう巣鴨信用金庫が立ち上げた”S-biz”もその一つで、今回のセミナーもその一環であった。
冒頭の質問に戻る。
「日本の中小企業の割合は、皆さん、どのくらいかご存知ですか?」
しばらく参加者を見渡した後、
「97.7%」
日本の全企業の中で、97.7%が中小企業。
それまで大企業支援一辺倒だった政権も、いよいよこの数字に目を向け始めた。
「2014年に中小企業振興基本法が制定されました。
これが何を示すかわかりますか?
いよいよ、安倍政権も本気になった、ということです。
それで自分たちの活動も注目され始めた。」
小出先生は、国会の場にも呼ばれ、自身の実績や経験をかなりヒアリングされたのだという。
少し前まではありえなかった環境が、現在整いつつある。
私も、それを実際に感じている。
そして今日、それを再度痛切に感じた。
経産省本館にて、小規模事業者継続化補助金 成果発表会に参加したのだ。