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野菜情報

大玉トマトの品種事情 ファースト、桃太郎、そして黄化葉巻

大玉のトマトは現在多くの品種が、桃太郎の系統になり、大なり小なり差はあるが、大きな違いはないようになった。
それだけ、桃太郎の誕生は衝撃的であり、優れた品種であった。

それより以前の大ヒット品種がファーストだ。
一番のトマトになるように、とファースト=firstの名前が付けられた。
愛知の農家とタッグを組み、県下でたくさん作られた。

評価を不動にさせたのは、「サンドイッチに挟んでも、だれない」という特徴だった。
それまでのトマトは、果肉の中のゼリー状の部分がだれてしまい、パンにはさんだ時にドリップが出る。
ファーストはこの液だれがなかったのだ。

りょくけんも、出たばかりのファーストトマトを主力に据え、糖度基準も決めた。
社員、パートで食味チェックを行い、トマトを「甘い」と感じる糖度が6度であることを突き詰めた。
6度以上を「完熟」と設定し、それ以下のトマトよりも高い値段で販売したのだ。

これを覆したのが、桃太郎だった。
「完熟系」とも言われる品種群で、それまでのトマトは真っ赤に熟させると、流通過程でやわらかくなってしまい、販売できなかった。
ところが、桃太郎は、木の上でかなり赤みを持たせることが可能な品種だった。

糖度6度はかなり当たり前の基準になってしまい、りょくけんの糖度基準も糖度7度以上を「完熟」に変更した。

この、糖度の高いトマトを「完熟トマト」として商標登録しようとしたが、当たり前の名前だとして、承認されなかったと聞いている。
ここで、登録が認められていれば、「フルーツトマト」という名前は生まれず、「完熟トマト」という名前がもっと一般化されていたかもしれない。

とにもかくにも、桃太郎トマトは業界を席巻する大ヒット品種となった。
かなり赤く、完熟させることができて、食味も優れたトマト。

ここ最近の品種改良は、この桃太郎に、耐病性を付加することに終始し、それ以上のヒット品種はない。

この「耐病性」というのはとても重要だ。
インフルエンザやほかの流行り病、疫病、感染症というべきだろうか、植物の世界でも、そういったものがある。

黄化葉巻病(おうかはまきびょう)。

黄化葉巻病

20年くらい前に、日本にも南部から上陸した。
つい最近まで北海道まで上陸していない、と言われていたが、実際には事例が出始めている。

シルバーリーフコナジラミという病気が媒介するのだが、このウィルスに苗が感染すると、葉がくるくるっと巻いて、光合成を正常に行わなくなり、木が短命に終わり収穫量も増えない。
ここ数年、本当に拡大してしまった病気のため、種苗会社の一番の課題がこの病気に対する抵抗性をトマトに植え付けることだった。

結果として、今はかなりこの病気にも強い品種が出た。
追いかけっこ的なところもあり、次の疫病が出るのは目に見えているのだが、そろそろ味のほうにも舵を切ってほしいところである。

そういった流れからか、差別化を目指して、最近、ファーストトマトを作る農家さんが再び増えた。
昔食べた青い味がする、甘い、美味しい、などの理由で、消費者の評判も良いようだ。

少し前まで、りょくけんですら、ファーストトマトを確保するのが大変だった。
りょくけんの元祖だったトマトなのだが、年々栽培する人が少なくなっていたからだ。

今年は極めて順調。ぜひ、この昔ながらのファーストトマトを試してほしい。