2015年には「もう2016年は作れない」と聞いた。
「ああ、そうですか。」とは言ってられない。
それでは社長 兼 商品担当の名がすたる。
私共にとっては壮大なスケールの冷蔵施設とジュース加工設備である。
非常に勝手な思いではあったが、取引先の2社にそのまま買ってはくれないか、と打診もした。
もちろん知っているジュース工場に試作も含め、製造を打診した。
北海道、青森2社、長野3社、新潟1社。合計7社に問い合わせた。
「pH調整なしではできない。」
「今の時期は忙しいから。」
「もう人参ジュースは受けられない。」
「うちも試作したことがあるんだけど、発酵してしまって、できなかった。大きな声じゃ言えないけど、瓶が爆発してしまってね※」
「レモンもクエン酸も加えないで作るなんて、お国に目をつけられるようなことはできないんだよ。だから、その工場はつぶれたんだよ※」
※察するに瓶のフタがとんだ程度だと思う。
※説明がむつかしいが、決してつぶれたわけではない。
丁寧に説明したつもりだったが、半ばお怒りになる業者さんもいた。
そんな中、8社目がYESと言ってくれた。
「うちの殺菌設備であれば、たぶんできます。
人参ジュースの要望も多いからやってみたい気持ちもあります。
でも初めてなので、試作とさせてほしい。」
そういってくださったのが、元りょくけんのおひざ元、浜松のKurumiX(くるみっくす)さんだった。
復泉会という地元の養護施設に併設された工場で、素晴らしい設備を持つ。
浜松はみかんなど柑橘の栽培が盛んだ。
この立地を生かし、障害のある方にも仕事を、と、ジュース加工場をたてた。
なんと、柑橘の苦みが入らないように、と皮をすべて手で剝く。
実は、りょくけんのみかんジュース小瓶や国産グレープフルーツジュースもこちらで製造してもらっている。
皮の油分、苦みが入らないので、甘さが際立つ仕上がりになっている。
パレート殺菌庫 |
KurumiXさんのもうひとつの強みは、殺菌設備だ。
パレート殺菌と言って、金属板を高い温度で熱し、100度以上に上げて、幾重にも並んだ鉄板の間に果汁を通して殺菌する方法。
優れた殺菌効果があり、4分という短時間で済む。
ここの工場のジュースの香りがとても豊かなのは、この短時間で殺菌が済むからだと思う。
2016年3月、かくして、試作していただいた。
運び込んだ原料は300㎏。
通常の歩留まりは3割くらいだったから、180ml換算で500本はできるはずだった。
が、できたのは55本。
想定の十分の一だった。
果汁はとれたが、瓶に詰める工程で、濾すフィルタを通らず詰まってしまったのだ。
何度か繰り返して成功したが、できたのはごくわずかになってしまった。
歩留まり5%の貴重品。
飲むと、ものすごく美味しい。
「これこれ!」
と思った。
挑戦してくださって、しかも美味しいものができた。
KurumiXさんへの尊敬の念が沸く。
しかしながら、歩留まり5%では、採算ベースにはまったくのってこない。
初めての製造だったので、菌検査も行い、賞味期限設定をしなおさなければならなかったので
まったく販売はできず、お得意様と販売スタッフに配布した。
ありがたいことに、店頭で感想を言われたり、問い合わせもいただいた。
「あれ。こないだもらったやつ!美味しい!売ってないの???」
「試作なんです…。」
店頭では説明しきれない背景がそこにはあった。
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それから四か月後の2016年7月。
暑い暑い日。
インターネットで調べ物をしていたら、ふと目をとめるページがあった。