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産地情報

雹害。人手不足。農業は大変だ。~川上村の由井さん~

由井さんから着信があった。

珍しい。何があったのだろう?
売場では携帯電話の使用が認められていない。
お越しいただいたお客様に失礼だし、何より私用に見えるからだ。
ごそごそっと奥にかがんで折り返した。

「昨日、雹が降りまして。3回も降ったんで、今日出せてません!」

長野の川上村。周辺の南牧村、野辺山を含めて高原野菜のメッカだ。
由井さんにはサラノバレタスがきっかけでお会いし、メインのレタスも昨年から取り扱わせていただいている。

夏のレタスは美味しい。

気温が高くふわっと育つ。

俗に、キャベツは重いものが、レタスは軽いものが美味しい、と言う。
冬場は寒いので、生長に時間がかかり、ぎっしりと詰まるので、軽いレタスは望めない。

軽いレタスは夏こそ本番なのだ。

標高1300mある川上村はレタスの大産地で、品質も良い。由井さんはその川上村にあって、抜きんでた存在だと思う。
種苗会社から試作の依頼が絶えないし、面積も10ヘクタールを超え、頼もしいことに、長男も次男も就農して、お父さん譲りのこだわりを見せている。

レタスの売上が上り調子で、いわずもがな、サラダには欠かせないので、欠品は痛い。しかも回復までに「2週間くらい。いや3週間。いやちょっと分からないなあ。また連絡します。」

3週間はかかるな…。

お取引のある農家さんで、何件かレタスを作っている方もいるので、お声掛けしてなんとかつなぐのだが、いてもたってもいられない。。。

本当は、経理も会計も、人事も、来月の通販カタログも準備しなくてはいけないのだが、産地に行くことにした。

始まったばかりのぶどうや、もう少しで始まる梨を見た後、日が沈み始めた川上村に着いた。

農免道の真ん中で、由井さんが待ってくださっていた。

「お久しぶりです!」

3年ぶりにお会いした由井さんは、幾分やせたように見えた。

「痩せました?」と聞くと

「10㎏痩せました。なにしろ人(手)の問題で…。
今日はちゃんと来るかな?来るかな?と毎日心配しなくちゃいけなくて!」

川上村は「朝どり」がウリだ。夜中の0時に起きて2時くらいからレタスを一斉に収穫し始める。一つ一つの畑が大きいから、学生アルバイトを、由井さんのところでは5人ほど雇用して毎年収穫にあたってきた。

が、これがあてにならない。3時から、という条件で採用しているが、大目に見て、5時から来ればいいから、としているのに、当日になって「今日休みます。」とか無断欠勤や、一日でやめる輩が多いのだと言う。

「しなくて良い心配が多くてね…。」

無論、由井さんも対策は打ってあった。カンボジアに行き、採用(研修)の面接。
「日本で働きたい」と目を輝かせて応募してきた180名の若者を面接し、3名採用を決めていたのだと言う。ところが、現地のエージェントの不手際で、3人とも来れなくなってしまった。

「私も大変ですが、あの子たちがかわいそうで。せっかく日本に来て農業を学びたい!って言ってきた子たちなのに。」

カンボジアはあきらめて、今年末にはベトナムからの研修生を3年体制で受け入れる。

「今年からは、なんでも言ってください。サラノバもきちんと作りますから!」

実はサラノバの苗はできている。
植える場所も、とてつもなく大きなハウスを建てて、すでに準備ができている。

が、上記のような理由で人手が足りない。メインのレタスも待ってはくれない。かなりサラノバの苗も廃棄してしまったようで、もったいない。。。

そこにきて、雹害。

1㎝~5㎝あろうかという雹が、1時間に10㎜という雨とともに降ってきたそうだ。
周囲のレタスの葉はぼろぼろ。

それでも、なんとか形になっているようにも見える。

「どうかなあ。この畑で半分がものになれば良いほうかな。満足できないものは出したくないですし。外葉がやられているからね。中に栄養を送れないから、生長が遅くなってますよ。」

もったいない。

「りょくけんはサラダにもしていますから、小さくても、少し傷があっても、使いますから!来週はなんとか出荷してください。」

「そうですね。あまり満足できないものは、私も息子たちも出荷したくないものですから…。でもご事情も分かりますので、できるだけ来週は出荷します!」

自信も誇りもある。そんな由井ファミリーに、こちらの事情だけを押し付けるのは本当に忍びないけれど、心待ちにしているお客様もいる。

来週 8月18日くらいからは、なんとか回復して納品されることを祈るばかりだ。