久方の産地訪問は、これまた久方の宮崎・西都(さいと)。前回は7~8年前に遡る。当時、松屋銀座本店に、本格的に野菜とその惣菜のお店を立ち上げることが決まり、サラダの色彩に、パプリカの産地開発と通年供給が至上命題になっていたのだ。
パプリカは、南米の熱帯雨林で生まれたピーマンの大果種で、ハンガリーで品種改良されたと言われている。通常のピーマン(薄皮タイプ)が、開花後20~30日くらいで収穫可能なのに対して、パプリカはその倍の60日かかってようやく収穫できる。また、赤くなるまでにとてもエネルギーが必要で、一段※で3玉収穫できると、次の段は花がとび、収穫できないこともざらにある、とても非効率的な作物だ。
緑から赤になる途中のパプリカ |
パプリカ先進国のオランダでは、品種の改良とともに、施設=ビニールハウスと水耕栽培の技術が進んだ。水に肥料分などを溶かしこみ、半ば強制的に植物に養分を吸収させるため、花とびが少なく、収穫が比較的安定する。
ところが、りょくけんでは、方針として水耕栽培は扱わない。栽培している人を探すのはかなり難儀だった。そして、たとえ見つかったとしても、先に挙げた理由で、経営にならない、とその年でやめてしまう方が多かった。
当時ようやく国産ものがちらほらと出てきた萌芽期で、栽培技術が確立していなかった。
そんな時に出会ったのが、川越さん。とかくパプリカ栽培は大変だ、ということがすごく伝わってきた。病気は出るし、樹が疲れて、花とびが出る。数週間、収穫ができないこともざらだった。それでも買ってくれる人がいるのなら何とかしたい、と。
その後、銀座のお店にも会いにきてくださり、以来ずっとお付き合いくださっている。
土耕のパプリカは今も昔も、非常に貴重で、当時西都で、8名程度のパプリカ部会が立ち上がったが、今では、川越さん一人になってしまった。
当初、直播で種から作っていたが、接ぎ木に切り替えたのがターニングポイントだった。収穫の増減が安定してきたのだと言う。オランダの食味や形、色の優れた品種を、日本の気候風土に合った台木に接いで、現在では12月から6月にかけて、絶えず供給していただいている。
川越さんのパプリカはジュース分がとても多く、甘みが強い。糖度は8度くらい。生食や加熱しても美味しいが、ミキサーにかけて、ジュースにしても美味しい。
また、水耕栽培に比べると日持ちが抜群で、10日間くらいは、全く問題ない。カットしたものであっても、ぴったりとラップに包むと、同様に日持ちするから驚きだ。
よく赤と黄色のどちらが美味しいか?と聞かれる。これは好みによるところが大きい。赤いパプリカは糖度も高いが、酸味もあり、味にメリハリがある。黄色は、酸味がほとんどないため、より強く甘みを感じる。
栄養価は、赤いパプリカに軍配が上がる。ピーマンに比べるとビタミンCが300倍。ところがこれは赤に限る。黄色パプリカは含まれる色素が違うため、ピーマン程度のビタミンC含有量にとどまる。栽培期間が倍、必要ではあるが、良いことは300倍なのだから、進んで食べたい野菜のひとつだ。
■パプリカ 宮崎県産 1玉 324円~410円(税込) ※大きさによる