りょくけん東京

りょくけんだより
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産地情報

「食べた人が明るくなるような、そんなみかんを目指しとるんよ。」~木村早生~

なるほど岡本さん、こうい方か。そう頷いた。

岡本さんとのお付き合いは2年ほど前から。それからうまく続いているのだからよほどのご仁、なんて思っていた。つくるみかんの品質も秀逸。他の生産者のみかんに切り替えたら、売場スタッフから不満が出たこともある。

りょくけんの始まりは、みかん。永田 照喜治さんが熊本の代々の土地を離れ海沿いの断崖絶壁のやせた畑でみかんを作ったところ、思いのほか絶品であったのを発見したことから、後の緑健栽培だったり、スパルタ農法、断食農法、永田農法と言われる考え方が始まった。
だから、みかんの取扱量は多かったし、必ず担当者がいた。そのためか、私が自ら産地に足を運ぶことはめったになく、今回はほぼ初めてみかんの産地を歴訪させていただいた。

現在の担当者は、金子さん。今でこそ、小売部門=株式会社りょくけん東京として別れたが、元同僚だ。実は、前職であったエフアールフーズ※でも同僚だった。お互い野菜熱、くだもの愛が高い。

「何時に来ると~? 昼めし、どうすっとー?」

熊本市街を車で走っていると、岡本さんからまず第一報の電話が金子さんに入った。生粋の熊本人のようだ。

岡本さんは、熊本のみかん名産地 天水を「縄張り」とする岡本青果の社長さんで、みかんの選果作業を主な生業としている。
岡本青果に着くと、社長自らリフトを動かし、選果の終わったみかんの整理やコンテナーの整理を行っていた。

体格が良く、ブルーの作業着に身を包み、帽子を目深にかぶる。こちらを一瞥して、あいさつも早々に事務所に案内された。

それにしても、しゃべるしゃべる。

途中、金子さんがコンテナに山積みされたみかんをひとつふたつつまんで、半分ずつ食べた。
お世辞にも美味しくない。。。

「今年は淡白やろ!?だよなーこんだけ雨降ったもんな~。市場じゃあ、平均が糖度9~10度言うとる。」

「早速で悪いんですが、『木村早生』見に行きましょうよ」と金子さんが切り出した。

車に乗り込み、みかん畑が続く、山へ向かった。

熊本市街から有明海に行くまでに、金峰山を始め、たくさんの山がある。海からの照り返し、赤土、排水&日照の良い斜面。先人たちはそこにみかん畑を据えた。山肌のそこらじゅうがみかん畑である。
「あそこは、○○さんとこ。あっち行くと、○○さん。あれは〇〇んとこ。俺が生徒会長の時の副会長だった奴やなあ。」
まるで、主のように畑の配置をよく知っている。

「ここ、ここ。ここを左にぐーっと!」

みかんはそこらじゅうにたわわになっており、豊作だ。

ただ、私が知っているみかんと少し様子が違う。大きいのだ。
「農家は、一番評価が高い『Mサイズ』を作ろうとするんよ。評価が高い、っていうのは値段が高い、っていうことね。ところが、雨が多かった。Mサイズを目指して作っていた人たちは、みんな大玉になりすぎて2Lとか3Lを超えるようなサイズになってしまった。」

木々の間を抜けて、ある一列に着く。

「これが『木村早生』だ。」

見てきたみかんの中でもさらに大玉の果実がなっている。

「木村早生は大玉傾向のみかんだから、さらに大きいな。でも、甘みが独特で後味が良い。それに粒々感があって独特なんよ。」

もう一つの畑に向かう。

「俺の畑みてもらおーっと。最近買った畑で、どうなってるかな~。何しろ本業があるけ、あまり手をかけられんもんで。金子さんが小玉売ってくれるから安心して、小玉つくっちょる。」と岡本さん。

畑に着くと、こちらもたわわになっているものの、小玉傾向。だいぶ違う。

「これは宮川の枝変わり。」
「これは興津の枝変わり。」
「これは…」

「なんか、一筋縄の品種が無いですね? 試験場とやりとりして変わった品種を作っているんですか?」
「苗屋ともつながりがあるけれど、試験場ともやりとりするね。最新の情報を入れて、経済活動をしなきゃいけんけね。」とニヤリ。

「俺の畑は『陽』を目指してるんよ。陰陽の”陽”。やっぱ暗いのは、いけん。みかんもそれを食べた人も明るくなるような!」

岡本さんは農業専業ではない。だからこそ、最新の情報にも強く、貪欲だ。
みかんをつくるようになったきっかけを聞いてみた。

「親戚のおじさんからさ、みかん選果だけでは将来食えんくなる、って言われてさ。畑を買ってみかんも作れって。俺もそうだなあと思ったから。実際作ってみないと農家ともきちんとやりあえないし。あ、ケンカはせんよ。社長はケンカしちゃいけん。ケンカはケンカを呼ぶけん。」
なるほど。

石ころだらけの赤土土壌。

「2年前に金子さんに会ってさ。俺もおいしいもんをつくるの好きだから。それからずっと続けてる。」
「いやあすごいですよ、岡本さん。」
「見たか!俺の浮遊児農法!」
「ふいうち農法!?」
「いやいや浮遊児。たくさん手をかけるんではなく、ある程度、放任することで、みかんの力を引き出して、陽の畑にすること。」

みかんもさることながら、その大きな人柄にひかれるのでした。

「俺も東京行ったら(りょくけん松屋銀座店に)寄ろう~」と岡本さん。

「ええ、東京駅からは銀座店は来やすいですから!ぜひぜひ。」と畑を後にした。

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あれから、3週間。木村早生が、11月18日ついに入荷した。

不安と期待を胸に箱を開けると、外観はそんなに悪くなく、おしりのほうから皮を剥くと、内袋が途中で割れて、中の果肉がむき出しになり、果汁があふれた。
小玉を食べるとややすっぱいが、十分に美味しい!糖度も13.8度と高い!
続いて大玉を食べると、こちらはさらに甘みを感じて美味しい!糖度は11.9度だったが、酸味がきれいに抜けて、より甘く感じる※。

早速、金子さんにメールで報告。

「木村わせ美味しい~」

みかん担当 金子の今年のおすすめ。木村早生をお見逃しなく。

■完熟みかん(木村早生) 1袋 540円(税込)


 ※エフアールフーズ …ユニクロを展開する(株)ファーストリテイリングの子会社。すでに解散。りょくけんの野菜くだものを中心に野菜事業を展開していた。


 ※みかんは大玉は酸味が抜けやすい。小玉は酸味が残ることが多い。果実や野菜は、収穫後も生きており、呼吸をする。その際、エネルギーとして使うのが、糖分よりも先に酸味を使う。大玉はその消費が早いため、先に酸味が抜ける。もし、すっぱいのが苦手の方がいらっしゃったら、大玉のみかんがオススメだ。