「ここをカローラで上がるんですか?」
「ええ。そうですよ。上がれますよ。」
一度、前の道に頭から入り、バックして旋回。
およそ150度くらいあるのでは?と思われる未舗装の道を右折して、丘を登った。
宮崎県日向(ひゅうが)。”日が向かう”の名のとおり、冬の晴天率が、静岡の浜松と並んで、抜群に高い。そこに着目して永田照喜治と宮崎の協力会社がトマトを栽培し始めて、20年以上になる。
当時から技術者として実力をつけた安藤さんは、今りょくけん宮崎の代表だ。
かくいう私も、りょくけんに携わって10年になる。
ただ、本丸とも言える日向の畑はしっかりと拝見するのは初めてのことだった。
というのも、私が行かずとも、諸先輩方が、きちんと農家さん周りをしてくださっていたからだ。
日向は、平地が少ない。
だから、山だったり、小高い丘だったりの上部を削り平らにしてハウスを建てる。
そんなハウスを安藤さんところでは、いくつも、広範囲に抱えている。どの畑も、惚れ惚れするような赤土。決して肥沃でないから収穫量は望めないが、きわめて美味しいものが取れる。
トマトの原生地は高原。カラカラの乾燥した気候と強い光を好むから、水はけの良い丘の上のハウスは、トマト栽培の最適地なのだ。
ハウスの中は、一面ビニールシート(マルチ)が敷かれ、水分が入らないのでカラカラだ。
加工用トマトと違い、支柱を立てて、半年ほどの長期栽培を行う。
不思議なことに、トマトにも重力感覚があり、下から順番になる。だんだんと水を上げるのがきつくなるのか、上の段の方が小玉になる。味はきわめて濃い。
写真を見て欲しい。
茎(ツル)を下げ、横に寝かせるように仕立てている。こうすることで、トマトのサイズは再び大きくなるというから驚きだ。
りょくけんでは、「完熟」と「特選」にレベルわけしている。すなわち『完熟』が8度で、『特選』が9度以上だ。
「完熟」というと、赤くなっていると思われるが、そうではない。本当に真っ赤に熟させてしまうと、消費地まで流通させるだけで、やわらかくなってしまい、販売できない。※
このオレンジ色が最高で、糖度ものり、かつ流通にも耐える。
食べると、”もう”ウマイ。意外だが酸味は無く、とても甘い。
美味しんぼの7巻「大地の赤」で触れている”有田焼”のような”赤”とはこの色なのではないかと思う。
週間で300~500ケースはとれるが、特選はほんの10数ケース。だいぶ小玉になるが食べると自然に笑みがこぼれるほど美味しい。
りょくけん宮崎の安藤社長や奈須さん、長友さん、経験豊かな猛者たちが育ててたトマトたち。
「トマトの春」をお見逃し無く。