「やっぱりうまいね。」
電話の向こうで、浅川さんの声が弾んだ。浅川さんには嘘がない。
8月末。北海道 新十津川町の浅川さんが作る、ダークホースかぼちゃの第1回目の収穫が終わった。
8月11日に訪ねた際、今年も8月末に1回目の収穫をする、と伺っていたので、確認の電話をしたのだ。
8月11日。「この部分がコルク化したら収穫。」と浅川さん。
「今日、ちょうど収穫の1回目が終わったよ。それでね、食べてみたんだよ。あれは、やっぱりうまいね。粉質感というか、ホクホクした感じがね。これから何日かかけて磨いて、風乾したら、甘みも増して、出荷できるようになるから!」
風乾中。
かぼちゃには、当たり外れがある。ツル性の植物で、ひとつの種からいくつものツルが伸びる。そのうちから2本のツルを生かし、おのおののツルから、2玉のかぼちゃを育てる。つまり、1株から4玉を収穫するのが従来のやり方だ。しかし、それでは、どうしても栄養の隔たりが生まれ、当たり外れが出るのだ。全部外れ、ということも少なくない。
浅川さんは、そうしない。
一株から1本のツルのみを生かし、勢いのある場所で受粉させ、良く出来た玉、ひとつだけを生かす。こうすることで、栄養が集中し、美味しくなる。決して収穫量は求めない。
「廣田さんのじゃがいもうまいだろ?なぜか知ってるか?この山で作ると何でもうまいんだよ。」
長年のお付き合いがある、じゃがいもの生産者 廣田さんと浅川さんは家も畑も隣同士(北海道基準)だ。初めて廣田さんに連れられて、浅川さんにお会いしたとき、こともなげに、廣田さんにそう言い放って、ドキッとしたのを覚えている。浅川さんは歯に絹を着せない。
「平地で作れば楽だし、収量もあがるんだけどね。山で作ったほうが美味しくなる。」
森だった裏山を開墾した広大な畑。美味しさには、もちろん、その赤土も寄与している。ただ、浅川さんも口では、そう言うものの、畑の周りを切削して溝を掘り、余計な水分が入らないの様にしていること、株と株の間が広いこと、そして、一株一果、と恵まれた環境以外の努力をたくさんなさっている。
畑の周りは排水のために切削。
「これ(ダークホース)はね、小玉の品種だから、あまりつくらないんだよね。北海道では、2~3名しか作っていないみたいだよ。でも、これはどこに持って行っても、評判が良い。」と目を細めた。
「そうそう、東京からわざわざ電話ももらってね。どこで調べたんだか分からないけれど。『銀座でかぼちゃを買って、感動した!』って言われたんだよ。嬉しかったなあ。」
8月も中旬に差し掛かった頃。19時を過ぎ、日が沈んだが、まだ辺りは、明るかった。
あれからもうすぐ一ヶ月。
9月15日ごろには、店頭にも登場する。
浅川さん夫妻。2009年撮影
【店頭】ダークホースかぼちゃ 北海道産 100gあたり 71円(税込)