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不知火(しらぬい)デコポン開始。

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福岡の森さんのつくる不知火が始まった。

みかんが終わると、手で皮がむける柑橘類が少ないため、人気がある。

初めて森さんの不知火に出会ったのは、前職で東武池袋店の店長をしていたときだ。

「発注もしていないのに、何か来た。」とやや憤慨するも、とりあえず食べてみよう、ということになり、販売スタッフさんの一人にお願いして、切っていただいた。

しばらくすると、ぷ~んと良い香りがして、「美味しい!」という大きなつぶやきが聞こえてきた。

「店長、ちょっと来てみて食べてみてください!」と食べると、柑橘らしいさわやかな香りと、サクサクした食感、抜群の甘み、程よい酸味に魅了された。「美味しい!」と思った。もう7年も前のことになる。

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森さんは飾り気の無い農家さんで、一見すると、強いこだわりは無いように感じる。ただ、熟度と美味しさに関しては、かなりのこだわりを持つ。

「デコポンも、早く出荷すれば、値段が付く。でも美味しくない。それでは、一回目は買ってくれても、そのあと続かない。だから、少し遅くとも、木の上で完熟させることを、自分は心がけている。それが、農家としてのクオリティーだ。」と断言する。

小話のようになるが、不知火は、いわゆるデコポンの品種名だ。結論から言うと、農協を通して出荷されたものだけが、デコポンという名で販売ができる。当初、おでこの部分が出っ張っているデコポンは、商品にならないと、注目されなかった。流通の過程で、そこから傷むと考えられた。ところが、その食味の良さが着目され、熊本で商品化が始まった。おでこが出ている特徴も、逆に打ち出しに使い、「デコポン」という商標が生まれた。当時は、熊本県がとった商標だったので、熊本県産で、糖度が13度以上のものだけが、デコポンの商標を許された。その結果、さまざまな名称が生まれ、愛媛ではヒメポン、広島ではキヨポン、静岡ではフジポン、徳島ではポンダリンという名称が使われたのだが、全農と熊本県とで話し合いが行われ、現在では、農協を通して流通されたものに関しては、デコポンの商標が使ってよいことに落ち着いた。

食味の良さと食べやすさから、人気を得た不知火は、瞬く間に栽培が広がった。

柑橘類を含む多くの果樹類では、接ぎ木という技術があり、枝に、別の品種を接ぐと、その品種が収穫できる。デコポン人気に着目したの全国のみかん農家がこぞって接ぎ木を行い、栽培量を増やしたのだ。量が増えればうれしいのだが、一方で品質にばらつきが出てしまった。粗製乱造。

正直な話、美味しい不知火と美味しくない不知火には、雲泥の差がある。一つには、酸味の強さがある。不知火は、みかんと違い、とても糖度が上がりやすい品種である。同時に、酸味も強く持つ。そのため、収穫後、一か月ほど保管し、酸味を抜く。果実は、収穫後も呼吸を続けており、そのエネルギーとして先に使われるのが、酸味成分のため、おいておくと、酸味が穏やかになるのだ。

ところが、早く出荷すれば、高値がつく。農家さんによっては、この保管期間(予措という)を置かず高値を狙って出荷してしまう方もいるのだ。森さんの言う、『農家のクオリティ』は、そこだと思う。

森さんは、不知火を樹上で完熟させる。一般の農家さんよりも1ヶ月以上、収穫を遅くしているため、酸味が程よく抜ける。だから食味や香りが良いのだ。

森さんとりょくけんのように、直接の流通を組んでいる場合には、品種名である「不知火(しらぬい)」を使用する。正直、デコポンの名前が今日のように広まっていると、不知火という名前は、不利な部分もあるのだが、そこは仕方がない。「森さんの不知火」ということで、どんどん認知されることを願いたい。

ようやく始まった不知火。よその不知火とは一味違う。ぜひ比べてみていただきたい。

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■不知火 福岡県産 1玉 399円(税込)