「美味しいですね。」
「これまでのジュースの中で最高峰ですね!」
「あま~い」
「この辺にふわあっと、ふわあっと。」
「これにアルコールが入っていれば…。」
内々で試飲すると、称賛の声が相次いだ。
ピノ ノワールは、フランス・ブルゴーニュ地方を代表するワインぶどうの品種だ。同じ赤ワイン品種のカベルネ・ソーヴィニヨンと、よく比較される。カベルネは、非常に優れた品種で、どんな土地でも、品種の力で、ある程度の品質になることが知られている。一方、ピノ ノワールは、「テロワール」に左右され、土壌や、その年の気候、栽培技術によって、品質が変わる。その上、樹の稼働時間が短く、収穫量が少ない。いや、少なくしないと良いぶどうが取れない、と言った方が良いかもしれない。そうして、時に、信じられないような品質のワインになり、世界を魅了する幾多のヴィンテージをこの世に送り出してきた。数あるワイン農園の中でも、ブルゴーニュの「ロマネ・コンティ」が、世界で一番の高値がつくのも、そんな希少性を生みやすいぶどう品種を使うからかもしれない。
香りまで美しいジュースをつくりたい。
そうして、5年前に初めてできたのが、ナイアガラぶどうのジュースだった。
赤いぶどうもなくては。
そうしてできたのが、カベルネ・ソーヴィニヨンぶどうのジュース。
��年ほど前だっただろうか。「ロゼ」のぶどうジュースを作りたい、という構想が持ち上がった。白ぶどうのジュースと赤ぶどうのジュースを混合すればできるもの、と思われがちだが、それは正式ではない。ロゼは、搾汁した後、ぶどうの皮を取り除くことで、淡い赤に仕上げる。昨年は、工場側から、拒否されてしまい、実現できなかった。今年は、責任取るから、と説得して、皮を取り除いて作った。
ぶどう自体は、昨年の秋に収穫し、搾汁するが、琥珀酸が結晶化して澱(おり)ができるので、半年寝かせた後、澱を漉して瓶詰めする。酸化防止剤も使用しないので、その半年で、色の変化が危惧された。酸化して、果汁の色が茶変してしまう可能性があったのだ。
杞憂だった。
綺麗なロゼに仕上がった。香りも、ナイアガラのような自己主張するものではないが、強く、かぐわしい。甘み、酸味のバランスもよく、想像以上の出来になった。感想は、冒頭で述べたとおりだ。
ナイアガラぶどう(ハウス)、カベルネ、ピノノワール。いずれのぶどうも、北海道 余市の安芸さんの手のもの。
「まだ若木なんだけど、ピノを植えてね。以前もやったことがあるんだけど、これでジュースつくったら、すごいものになるなあ、って思うんだよね。」
そう安芸さんに言われたのが、4年前。
りんごから西洋梨など様々な果樹を育てているが、専門は、ワインぶどうだ。栽培面積も最も広く、大半をワインメーカーに納める。
「正直、りょくけんさんとの商売はメリットが少ないんだよね。でも、なんていうかな。『農家』としてもね。りょくけんさんが考えることは『おっ』と思うことが多くて、『やりたい!』と思うものが多いんですよ。農家冥利に尽きるというかね。自分の名前が出るぶどうジュースなんて、どこもやってないからね。」
作成量や法律の問題で、安芸さんだけのぶどうでワインをつくることはできない。お酒類の製造は、酒造法によって、厳しく制限されており、海外のように、個人農家が自らワイナリーを持つようなことは、日本では、まず、ありえない。
「少し、法律も変わって、小さい製造量でも、作れることになってね。自分達で育てたぶどうで、自分達のワインが、これからは作れるようになっていくかもしれない。」
安芸さんの夢は膨らむ。
■ナイアガラぶどうジュース 2100円(税込)
■カベルネ・ソーヴィニヨンぶどうジュース 1575円(税込)
■ピノ・ノワールぶどうジュース 2100円(税込) …限定300本
■プレミアムぶどうジュース3本セット 6300円(税・送料・箱代込)
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「そうそう、安芸さん。ピノ ノワールちょっと高くないっすか?ナイアガラはハウスで育てるから分かりますけれど、ピノは露地で、カベルネと同じくらいの価格を想定していたんですけど…。」
「カベルネとピノではね、収穫量が全然違うんだよね。同じ面積でも、3倍くらい違う。だから、決して高く売っているつもりは無いんだけども…。ピノは、若木から3年目でやっと収穫できるようになって、段々と多くとれるようになるんだけれど、樹の寿命が20年くらいしかないんだよね。だいたい、収穫量のピークが15年目くらいかな。そこからは、逆に収穫量も落ちていって、20年目くらいで切らないといけない。前回、作ったときも、それで止めちゃったんですよね。今年やっと5年目で、それで、りょくけんさんに声かけたんだよね。これから、樹が年を取るに連れて、味も年々良くなるよ~。」
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高価なジュースであることは間違いない。ただ、価値はそれ以上。
大手メーカーでは、決して実現できないジュースだと、僭越ながら、自負している。