場所と人を選べば、結果はついてくる。くだものの品質はそんな風に言い切っても良いかもしれない。
場所は三つの条件にしたがって選ぶ。
��.日当たりがよいこと。
��.水はけが良いこと。
��.昼夜の気温差が大きいこと。
さらに生産者さんと話し合い、よほど手を抜く人でなければ、美味しいものになる確率が高い。
ところが、だ。
6年前の銀座店オープン以来、ずっとびわに挑戦し続けているが、なかなか思ったような結果が出ない。
びわは、その生産の7割を長崎が占める。だが、東京までは遠い。そこで、房総に求めた。「田中」という大粒のびわ品種があり、特徴がある。何より、翌日には東京に届く。産地に訪れ、食べると、この上なくジューシーで甘みがあり、美味しかった。
ところが、梅雨のころ、雨が降る度に味が落ちた。水分を吸って、果実の風味が薄まってしまったのだ。
次の年は、雨の入らないハウス栽培のものがよいだろう、と判断し、ハウスびわを取り扱った。今度は単価が高すぎて、受け入れられなかった。
そんな失敗を繰り返しつつ、今年めぐり会えたのが、古賀さんだ。いくつかの産地から、サンプルを取り寄せた。ここ数週間で、今まで生きてきた30数年間よりもずっと多くのびわを食べた。そんな中で、糖度が高く(14度)、最もブレが少なかったのが古賀さんのハウスびわだった。
福岡の八女(やめ)。田んぼも多いが、いちご、ぶどうや桃の産地であり、品質をこだわる素地がある産地だ。古賀さん自身も、びわではなく、桃がメインの農家さん。ご自分で堆肥をこしらえ、きちんと匂いがなくなったのを見計らって畑に入れている。
平野部だが、少し小高い丘の斜面に、びわのハウスはあり、レキ質の土は赤みがあって、水はけが良い。今年は雨も少なかったために、特に美味しいものが育ったという。
「この地域では、私一人しかびわをやってない。だから、なおさら美味しいものをつくろうと思って。」
物腰の柔らかい、優しいしゃべり方だった。
オレンジ色の美しい透明感のある果肉は、他のくだものには無い。みずみずしく、繊細な風味だが、甘さが際立つびわに仕上がっている。
ハウスびわはまもなく終了。次は露地びわ。今度は本家 長崎産のものを扱う。
今年こそ!の思いは強い。