山崎さんのお名前を初めて伺ったのは、北海道だった。
「会長に言われて、さくらんぼを止めて、ミニトマトを始めたとき。りょくけんの古くからの生産者さんにはたくさんお世話になったなあ。それこそ、大分の山崎さんのところまで勉強しに行かせてもらってね。」
北海道 余市の中野さんと、ハウスの中でトマトを眺めながら、そんな話をした。
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内陸の、山道を車でかっとばし、道が少し開けたと思ったら、右手には海が広がった。杵築湾だ。左手に見える小学校のわき道を上がり、だんだんと細くなり道をがつがつ上がっていくと、山崎さんの家とハウスがあった。
どこかで見た立地だ。
「ハハハ。やっと会えましたね~。」と山崎さんが笑顔で出迎えてくれた。
週3回。昨年の12月から欠かさず、電話連絡をし合っているが、お会いするのは初めてだった。YMOの高橋幸宏さん似の、素敵な方だ。
夏に人気のいちごトマトも、冬はここ何年か失敗続きで、依頼する生産者を毎年変更するような状況だった。今期、いよいよ白羽の矢を立てたのが、他でもない山崎さんだった。2年前まではミニトマト、昨期まではミディトマトを依頼しており、いずれも高食味だったのと、その男気に、私の上司が頼った結果だろう。
山崎さんは、お父様の代から、りょくけんとお付き合いいただいている。そのときからトマトを栽培していたかというと、そうではなく、みかんの農家さんだった。大分の山間には、優れたみかん農家が多い。そしてそのときから山崎さんが農家さんだったかというと、そうでもなく、会社勤めだったと言う。
「上の娘が生まれるとき、親父がハウスを建て始めてね。出来上がったときに、『親父、何を作るんだ?』って聞きよると、『俺が作るんじゃない、お前が作るんだ』って言われましてね。まあ、それで、覚悟を決めて、トマトを作るようになりました。」
「へえ~。でも何でみかんではなくてトマトを作ったんですか?」と聞くと、
「そりゃ、生産部長がずっとそういう風に言ってたからですよ!『トマト作れ、トマト作れ』ってね。で、息子が生まれるときに、もう一棟、ハウスをつくることにして、俺が作るからには、家でも一番良い場所に建てさせろ、って親父に言って、ここにハウスを建てたんです。」
少し赤みを帯びた土に、ゆるやかな傾斜。海を見下ろせる、山間の、南西向きの畑。まさに、理想的な立地だ。
―どこかで見覚えがある立地。
北海道、余市の中野さんのハウスが立ち並ぶ、あの場所に似ているのだ。思えば、中野さんも果物栽培からトマト栽培に変え(させられ)たクチだったっけ。
ハウス内は、全面にマルチシートが敷かれ、余計な水分が入らないように管理され、傾斜地のために、水はけが良い。トマトの粒は大きくならないが、小さく、身がしまっていて、味が濃い。
銀座店でも、池袋店でも、すでに、多くのお客様のハートをつかんでいる人気商品だ。
「実も小さいし、離層でぷちっととりにくい品種なので、収穫が大変でね。昨年までのミディトマトは、午前中で収穫が終わってしまうこともあったけれど、今は、21時過ぎまで収穫しとるよ。まあ、でも美味しいし、りょくけんの役に立っているなら、うれしいかな。」
毎晩、酒の肴は、その日収穫した、いちごトマトだと言う。それは、美味しいのもあるが、ちゃんとした美味しさになっているのか、チェックしたいから。自信を持って出荷したいから。
今、収穫量も潤沢で、味も良く、まさに旬の時期。小粒のものほど味が濃い。
6月の半ばからは、産地は北海道になる。生産者さんは、中野さん。
山崎さん→中野さん。この黄金リレーは、商品担当冥利に尽きる。
■いちごトマト 大分県産 生産者 山崎さん 1P 525円 12月下旬~6月上旬