りょくけん東京

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日本のネーブルが美味しい。

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「森さんのネーブルの酸抜けが良いからすぐ始めなさい。」

九州に出張に行っていた上司から、東京の事務所にいた私への直電話だった。福岡県 古賀市の森さんのネーブルは、地元で生まれた「山見阪(やまみざか)」という品種だ。色づきが良く、他の品種に先駆けて12月の繁忙期に出荷できる。ただし「食味はそうでもない」というのが通説だ。

ところが森さん。色づきが良いから早く出荷するということはしない。12月末まで十分に木の上にならし、きちんとした熟度を見極めてから収穫、2週間ほど予措(よそ)※をして、酸を抜いてから出荷する。

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「他のネーブルが無い時に市場出荷すれば、値段は高くなるかもしれない。でも美味しくない。美味しくないものを食べたら、お客さんはもう買わない。やっぱり美味しくないとダメだと思っとる。」とは森さんの言葉。

そんな美味しくなり始める時期は、例年通りだと、1月15日ごろ。それが今年は2週間以上早く、上司からGoサインが出た。私の上司は、これまでの人生で嫌というほどくだものを食べている。毎朝、毎晩。その舌はかなりの信用度だ。12月末の、本当に忙しい時だったが、例年よりも早く始めることにした。

銀座店でも池袋店でも高評価。たしかに美味しい。アメリカのネーブルに比べれば、糖度は低いかもしれない※。ただ、程よい酸味と、味の濃さがあり、今年は特に、美味しいのだ。

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農家さんには多弁な方と寡黙の方がいる。森さんは間違いなく後者。どちらかというと強面で、愛車がスカイラインGTR。多くを語らないので、篤農家らしいこだわりが、あまり見えてこないのだが、ふとした一言二言に、キラリと光るこだわりをいつも見せてくれる。初めてお会いした時、そんな印象を持った。

「まずいものは出したくない。そういう、農家としてのクオリティ。それは落とさないように気をつけてる。」と格好良い事をポツリ。

「森さん、写真撮ります!笑ってください!」

「え?農家は笑うと、目じりにシワがよるけん、嫌なんよ。」

と言われつつ撮影。なんだかんだと言って優しい、そんな人柄がにじみ出た森さんの照れ笑い―。なんか良い。

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そういえば、もうすぐ不知火(=デコポン)や文旦が収穫を迎えるころ。ネーブルに引き続き、また楽しみな柑橘が始まる。

■山見阪ネーブル 福岡県産 1玉 231円(税込) 生産者 森さん ~2月中旬くらいまで

■不知火(デコポン) 福岡県産 1玉294円(税込) 生産者 森さん 2月中旬~3月下旬くらいまで

■文旦 福岡県産 1玉399円(税込) 生産者 森さん 2月下旬~4月上旬くらいまで

※予措(よそ)…収穫したばかりの柑橘類の多くは酸っぱい。植物は、収穫後も呼吸を続けエネルギーを消費する。柑橘の場合、はじめに消費するエネルギー源が酸味。しばらく保管しておくことで、酸味が程よく抜け、甘く感じるようになる。その措置のことを「予措」という。呼吸の際、水分も抜けていくので、相対的に糖度が0.1度~0.2度上がり、ハリハリだった果肉がやわらかくなり、さらに甘く感じさせるようになる。メロンの追熟と同じ原理である。

※米国産ネーブル オレンジには大きく分けて、へそのあるネーブル種とバレンシア種がある。湿気を嫌い、乾燥する土地の方が、糖度が高い。カリフォルニアなどの温暖な土地で、からからに乾いた場所の方が、総じて糖度は高くなる。ところが、4年ほど前のハリケーンで大被害を受け、樹がほとんどやられてしまい、いまだ生産量が回復していない。