りょくけんは、店舗ごとに厨房を持っている。
ごく自然なことに聞こえるが、実はそうではない。多くの中食ビジネス(惣菜屋さん)では、お店と別に、工場を持つ。工場で、洗浄、カット、調味を済ませ、お店に納品。届いた袋詰めの半加工商品を、店員さんが混ぜ合わせたりして、「出来上がり」になる。各テナントの限られたスペースを有効利用し、専門職を各店に所属させずに済ませるために生まれた画期的なシステムだ。
りょくけんには、それが無い。せっかくの野菜に、日持ちさせるためとはいえ、酸化防止剤やpH調整剤※などの添加物を使うのが嫌だからだ。
工場=セントラルキッチンが無いメリットか、松屋銀座店と西武池袋店ではデリカのメニュー構成が違う。4割は定番商品(共通)、6割は各店のシェフに任せ、季節やお客様の要望に応じて、変化をつけている。
そんな独自メニューの中、西武池袋店限定で、人気のひとつが、フライドポテトだ。
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「このフライドポテトのじゃがいもは国産?」
先だって、お客様から質問を受けた。意外だった。
「あっちのお店のは、アメリカの、切ったものを輸入しているって言うから。」
りょくけんで働いていると、国産野菜というのが当たり前すぎて、その価値を忘れてしまう。反省。
廣田さん(夏に撮影)。
国産はもとより、りょくけんのフライドポテトは、北海道 新十津川町の廣田康吉さんが育てた男爵芋を使っている。
肥料を少なめにし、決して肥沃でない赤土の山を切り崩して作った畑で育ったものだ。じゃがいもは、地上の葉が黄色に枯れたときが熟期。ところが北海道では、規模が大きい畑が多いので、効率を上げるため、葉がまだ青いときに、枯凋剤(こちょうざい)を撒き、人為的に葉を枯らしてから収穫の機械を畑に入れる。だから未熟果が多くなってしまう。
じゃがいもの完熟果には、肌の角質層が割れたようなヒビが入る。外観が悪く、敬遠されてしまうのだが、実はそのほうがうまい。廣田さんのじゃがいものほとんどが、そんな肌を持つ。
かさかさの肌は完熟の証。
ホクホク感が強く、味も濃くて、甘みがある。
さつまいもに似た甘さをもつ「インカの目覚め」などの品種が人気だが、やっぱり王様は男爵だと思う。
厨房から揚げたてのフライドポテトを店頭に持っていく際には、いつも「食べたい。」という誘惑に駆られる。ぐっとこらえて、その気持ちをお客様にお伝えするようにしている。
揚げ油には、愛知 太田油脂さんに特注している菜種油※を使い、味付けは塩こしょうのみ。塩は、大島 海の精さんの焼き塩を使わせてもらっている。
皮付きで調理しているのは、皮と果肉の間がもっとも味があり、また、皮にも栄養素や味があると考えているから。揚げる前に、一手間かけ、蒸しているので、冷めてからでも美味しい。
シンプルな料理だが、本当に、ウマイ。
■フライドポテト 100g(約6~8片)あたり 294円(税込) 西武池袋限定
■じゃがいも(男爵) 1袋 263円(税込)
◎空洞果についてお詫び…昨年は冬が長く寒さを引きずった後に、夏の猛暑が来ました。そのため、急激な生長が引き起こされて、中が空洞になったものが多数発生しております。大きな割に軽いものは、その可能性が高く、選果しておりますが、まれに混入していることがあります。腐っているわけではありませんので、食べて害があるわけではありません。取り除きお召し上がりくださいませ。
※酸化防止剤、pH調整剤…最近ではソルビン酸などの保存料に代わり、酸化防止剤やpH調整剤 がよく見られるようになりました。食材が悪くなる原因のひとつに「酸化」があり、風味や色を悪くします。これを防ぐためにビタミンCなどが利用されます。pH調整剤は、pH(ペーハー)を調整し、雑菌が増殖しないようにする食品添加物のひとつです。クエン酸などがあります。 ※油について…油を精製する際、歩留まりを上げるために使うヘキサンや消泡剤などの加工助剤を使用していません。また、原料の菜種は遺伝子組み換えではないオーストラリア産の菜種を使用しています。
※フライドポテト…英語では「french fry(フレンチフライ)」と言う、と習ったことがあります。イギリス人のお客様がいらっしゃり、流暢な日本語で「フライドポテトをください」と言われて、不思議に思い、よくよく質問すると、フレンチフライは細切りにして揚げたもので、りょくけんのものはフライドポテトと言って良いのだそうです。ちなみに、イギリスでは「chips(チップス)」と言います。有名なフィッシュ&チップスの「チップス」ですよね。