りょくけん東京

りょくけんだより
りょくけんだより~ BLOG ~

イネは主人の足音を聞いて育つ。

P9142412.jpg 

夜の23時8分。会社の携帯電話が鳴った。銀座店の料理長からだった。

「新米が届いたので、早速炊いて食べてみました。今年は、異常気象だし、正直おっかなびっくり食べたんですけど、、、ウマイですね!」

 ———————————————————————————————

実は、この2日間、りょくけん米の契約農家である山﨑さんの田んぼに、新米の収穫を手伝いにお邪魔してきた。今回は、お店の販売スタッフも同行。一日に何人も抜けると、店が回らないので、2日間に分けたのだが、米農家にとって、新米の収穫時期は、一年で一番忙しい時。この2日間は、貴重この上ない。

P9142426.jpg 山﨑社長(左)と池袋店 副店長(右)

茨城の旧岩井地区※は、東京駅から車で1時間半ほどの距離にある。山﨑さんは、とても先進的な考えをお持ちの生産者さんで、端的な例を挙げれば、茨城県で、一番最初に有機JAS認証を取得した方だ。圃場ごとに、有機JAS、特別栽培、慣行、陸稲などを分けて栽培している。りょくけんの契約圃場は、有機JAS認証ではないが、農薬は苗作の温湯消毒と、あぜ道の防除のみで、田んぼの中には農薬を使わない。事前に申請して必要書類を提出すれば、特別栽培の認証を得られるが、書類の申請よりも田んぼの状態を、という方針で、申請はしていない。普通の農家さんであれば、「無農薬栽培」と表記したくなるところだが、そういった表示法にも精通しているので、決して、それは行わない※。栃木の山間地を源流とする二本の川が流れ、元来とても肥沃な土地柄のため、肥料をかなり抑えて栽培している。追肥も基本的には行わない。

私が引率したのは、二日目。山﨑さんに案内していただき、田んぼに到着。気合を入れて、長靴を履いてきたが、水はすでに抜いてあるし、今年の高温で、田んぼの中はすっかり乾燥しきっていた。

「では、鎌を使って稲刈りをしましょう!」

イネを左手でつかみ、ギザギザの刃がついた鎌を手前に引いてイネの根元を刈る。一握りになるまで刈り続け、二握り分をそろえて、わらで縛り、二股に分けて、干す。一週間ほど干した後、もみと茎を分け、さらに籾殻から玄米を取り出す。白米の場合はそこからぬかを取り除き精米していく。

P9142379.jpg

稲刈り自体は、ザックザック刈れるので、なかなか楽しい。

しばらく作業を続けたところで、山﨑さんが

「あらあ、結構刈っちゃったねぇ。えーっと、これが一応、昔のやり方。でもこれでやると、後の処理も大変なので、今はこちらのコンバインを使います。」

P9142387.jpg ジャン!文明の利器登場!

「前の刃で刈り取りをして、そのまま巻き込んで茎ともみを分け、

P9142382.jpg

茎や草は断裁されて、後方から田んぼに排出されます。この草は、そのまま後で田んぼにすきこむんです。」

P9142392.jpg

そのスピードは、人が手でやるのとは雲泥の差。

「じゃあ、皆さんにもコンバインを運転してもらいましょう。あっちの田んぼを刈りやすいように準備しておきました!」

P9142393.jpg

当日は5人で来ていたのだが、アグリ山﨑 社員の石井さんに教わりながら、コンバインを運転させていただいた。※

「これが脱穀機のほうのギアで、このボタンがアクセルで、このレバーを前に倒せば前進、後に倒せば後進。このレバーが刃の上下で、横に倒すと左右に曲がります。」

P9142395.jpg

3反くらいだろうか、2時間、5名で代わる代わる運転し、最後はご実家が梨農家という小野寺さんが刈り終えた。貴重な体験!

運転してみて分かったことだが、このすごく便利なコンバインは、イネ以外の雑草に弱い。最近では、海外から流入した強い雑草があり、刈り取ってしまうと、コンバインに絡む。進行方向にある草はあらかじめ人の手で刈っておかなくてはならない。

というわけで、代わる代わる運転している間、手の空いたスタッフさんは、田んぼの草刈を買って出た。

「農業はね、草との戦い!」と山﨑さん。

イネに混在して生えていて、大きい。根元が入り込んでいるので、草が体に絡みついてくる。なるほど、戦いだ。

「少しは役に立ってますか???」と山﨑さんに伺うと、

「立ってるよぉ~」と言われた。

正直、結構大変だったが、そう言っていただけてうれしかった。根元を探して、刈って、田んぼの外に運んで、という作業を延々と繰り返し、2時間半かけて雑草をやっつけた。終盤は口数も減った。写真を撮るのも忘れてしまった…!

「外国の人が、日本に来ると、みんな驚くんだ。『畑に草が無い!』ってね。でも、逆に言うとそれは、除草剤をたくさん使ってるってことなんだよね。世界で一番、日本が除草剤を使うンだ。」と山﨑さん。

ふと我に返り、刈り取った草の前で記念写真!「とったどー!!!」広大な田園風景に夕焼けが落ちて、とてもきれいだった。  cf.冒頭の写真

日も暮れて、山﨑さんの会社に戻った。

有限会社アグリ山﨑。山﨑さんは自らの事業を、法人化している。経済面積は50ヘクタール。100m×100mが1ヘクタールだから、両翼100mといわれる野球場の50倍の広さ。壮大な面積だ。

前述したコンバインに限らず、稲作は、日本の農業の中でも珍しく機械化が進んでいる分野だ。多くの米農家が農協に属しているが、それは農協が持つ機械を利用できる利点が大きいからだ。

アグリ山﨑では、その多くの機械を自前でそろえ、自社の田んぼだけでなく、周辺の米農家の刈り取りや選果なども請け負ってもいるのだ。

P9142434.jpg

農業機材のメーカーと協力して、薬剤を使わない”機械除草”の開発を進め、最新の除草機をどこよりも早く導入していた。 

P9142439.jpg

貯蔵庫もすごい。

P9142432.jpg

12度に保った巨大な冷蔵庫!一年経って古米となっても、香りと旨みを保つのは、この貯蔵庫に大きな要因がある。

P9142430.jpg

機械だけはない。娘さんも一役(?)買っている。お米の検査官の資格や、有機JASの認証を行う資格も持っているのだ。ご好意で、お米の検査の様子も見せていただいた。

P9142440.jpg

30kg入ったお米の原袋に、専門のナイフを刺して、お米を取り出し、皿に載せる。

P9142442.jpg 

最初は黒い皿で、形質をチェック。

P9142443.jpg 

次に白い皿で、虫の害が無いかチェック。黒と白の皿を使い分けて、玄米を目で検査するわけだが、確かに見え方がすごく変わる。

 P9142448.jpg

そのほかに、「胴割れ」と言って、今年のように乾燥が強いと割れそうな米が発生する。それが混入していないか、特殊な鏡を使ってチェックする。こうして、厳しい検査を経て、米は、一等米、二等米とランク付けされていく。黒い米は、乾燥させているときにすれたもので、中身はなんでもない。緑の米は、未熟なのだが、「活青(いきあお)」※と言って、香りが強く美味しいのだとか。

今は少し落ち着いたが、 ピークで一日2000袋を検査したというから、すごい。

一通り見学し終わったところで、山﨑さんが静かに熱く語ってくださった。

「やっぱし米は、日本人の食の中心なんだな。日本人の体はそういう風にできている。米の消費量が減るのに反比例して、医療費が上がっているんだ。食の欧米化で、日本人の体が弱くなっているんだな。分かりやすい例を挙げれば、パンも麺もほとんど噛まずに食べられる。でも、この”噛む”という作業が、健康にも老化防止にも役立つんだ。実際、その欧米でも、日本食が見直されてきている。だから、米食は大事にしなくちゃいけないんだ。」

「今年は暑い年でしたが、米の出来は悪くないんですか?」 スタッフの一人が聞いた。

「確かに、春先の低温で、いつもは14番目に穂をつけるのが、ひとつ早く13番目についた。イネも子孫を残そうとするから、『あ、寒い、自分はだめかも』と思って、いつもより早く穂をつけたんだろうナ。光合成に必要な葉が一枚減ったから、収穫量はいつもより減った。それから暑さ。イネは猛暑から種(=米)を守ろうとしたのか、今年の籾の殻は厚い傾向にある。

―でもね。

そういう気象条件が悪いときこそ、農家の腕の見せ所だ。昔っから

『イネは主人の足音を聞いて育つ』

と言ってね。やっぱし頻繁に田んぼの様子を見に行って、必要な対策をとるのが大事なんだよね。『今年は、とれね』って言う農家がいるけれど、『じゃあ、これとこれはやったのか?』って聞くと、黙って下向いちゃうんだ。つまりやることやってないわけ。ほんとなら、頭(こうべ)を垂れるのは稲穂じゃなきゃいけないんだけど、農家の頭のほうが垂れちゃう。それとね、これは僕の想像であって、実際には会話はできない訳だけど、ご主人が、足しげく通うことでね、やっぱしイネもね、『それに応えよう!』ていう気になってくれるンじゃないかナ。」

「山﨑さんっ 山﨑さんがお客様に一番伝えたいことは何ですか?」と別のスタッフが問う。

「―こころだな。」

 -----------------------------

二日間にわたり、収穫のお手伝いは、大したことが出来なかったが、各スタッフの収穫はとても大きかったように思う。

農家さんの思い、こころ。 しっかり伝えていきたい。

P9142428.jpg 装い新たになりました。

~りょくけん 新米フェア~ 9月16日~30日まで

■りょくけん米(こしひかり) 茨城県産 2kg 2100円(税込)  5kg 3999円(税込)

P9152450.jpg

■りょくけん塩むすび 銀座店 1個 210円(税込)  池袋店 1パック(3個入り) 399円(税込)  山﨑さんのりょくけん米に海の精の塩。有明海で育てた、西山義満さんの海苔で巻きました。水には硬度の低いミネラルウォーターを使用。

◎紀州の梅をつかった「梅にぎり」 と新潟 渋谷商店の味噌を使った「野菜味噌」 の二種類も、期間中ご紹介(銀座店のみ)。ランチボックスなどのお弁当も新米に切り替わります。

※旧 岩井市は、2006年に猿島郡の一部と合併し、新設の坂東市になりました。

※農林水産省からのガイドラインで、「無農薬」、「減農薬」、「低農薬」の表記は避けるように指導があります。風にのって農薬が流れてきたり、無農薬でも認められる「農薬」があったためです(そのほとんどが、現行の有機JAS法で、使用が認められている農薬です)。

※コンバインの運転は、公道ではなく私有地であれば、免許は必要ありません。※「活き青」だけを収穫した玄米も販売されています。ただ、未熟な分、小さな米になるため、生産性が悪く、一般的ではありません。