りょくけん東京

りょくけんだより
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「どんな人が売っでいるのが分がるど、やる気がでるな。」

P9194414.jpg 「はりつめたゆみの~♪」と歌いたくなるのは私だけでしょうか…?

羽田空港から一時間半くらいだろうか、うとうとしていると、雲の下にうっすらと霞がかった山々が見えてくる。水墨画のようで美しい。ランディングに近づくにつれ、濃淡だけだった景色がはっきりとその輪郭をあらわして、うっそうとした森になってきた。レンタカーに乗り込み、走り出すと、なるほどこの地が「青森」と名づけられたのが良く分かる。緑を超えて、青なのだ。

P9194391.jpg 道路のすぐ脇に。「大自然」がそこにある。

空港から、途中、秋田県の領域に入りながら、三戸郡(さんのへぐん)田子(たっこ)という村に着く。標高400mくらいの峠をくねくねと通り抜けてくると、やっと視界が開けてきた。山と山に囲まれ、くぼんだ細長い地域に集落があり、その横に水田と畑が広がっている。だいぶ下に下りてきたが、それでも標高は100mを超える。車を降りると風が絶えず吹いており、心地よい。

そこかしこに「にんにくの町 田子」の看板が見える。心なしか、空気の中ににんにくの香りも含まれているような…。

takko.jpg 山と山に挟まれた限られた耕作地の田子。

生産者さんのご自宅を探してうろうろしていると、軽トラがググッと入ってきた。

「上平(かみたい)さんですか?」

「ハイ、そうです。」

「初めまして!」

「いやあ、どんな人なのかなと思ってました。ここじゃなんですから、奥の作業場に。親父も居ますから。」

稲作しかなかった田子町に、にんにくが導入され、産地ブランドとして確立されたのは数年前のこと。上平さん親子も稲を作りつつ、大根や枝豆、にんにくを栽培している。りょくけん銀座店の小さなお店では、本当に小さなスペースにしか置かれていないのだが、料理には欠かせない存在のようで、確固たる人気を持っている野菜だ。

ninniku.jpg りょくけん銀座店用に保管中のにんにく。土付きのほうが日持ちが良い。

muitaato.jpg 薄皮を剥くと、白いきれいなにんにくがお目見え。

僭越ながら、上平さんのにんにくを選ばせていただいたのは、1.出荷期間が他産地よりも長いため、しっかりした貯蔵庫(冷蔵)があること。 2.除草剤に対する考え方。 3.大粒にこだわらないこと。 の三つの理由からだ。

青森県が大産地であることは知っていたが、手を出さなかったのは、「発芽抑制剤」の問題があった。国内で作られるにんにくの最後の産地である青森は、次の産地の新ものが出る4月ごろまで持たせる必要があり、発芽しないように薬品を塗布していたという。最近になって、冷蔵技術が進歩し、薬剤を使わなくても、保管できるようになった。

それでも、「冷蔵庫がら出しだら、1週間で出さないと、芽が出るがら、気ぃ使う。」と一良さん。

上平さんが先進的なのは、いくつかの栽培方法で、にんにくを作っていることだ。 農薬を使っていない圃場、特別栽培の圃場、慣行の圃場、そして除草剤不使用の圃場。無農薬や特別栽培まで立ち入って栽培を行う方はいらっしゃるが、「除草剤不使用」を掲げて作る方はめったに居ない。

「除草剤を使わないほうが、やっぱり甘みがある。そして大粒よりも中くらいのほうが美味しいですよ。締まっている感じがします。」と息子さんの満広さん。うなづく一良さん。つづいて私もうなづく。

「霜降り肉ありますでしょ。あれは一種の病気のような状態で、ああいう肉が出来上がります。にんにくの、でかいのは、いわばそういう状態なんです。もっと言えば、肥料をたくさん与えて、6月に出荷できるにんにくが、青森の他の地域でもありますが、そういうものは、中身が詰まっていない、形だけが出来上がったようなものなんですよ。違う地域の肥料屋さんに、うちの肥料設計を見せたら、『少ない!倍入れないとダメです』といわれたことがありますよ。」

「確かに化成肥料を多く入れだほうが、大ぎぐ太ったものが取れるし、収穫量も抜群に上がる。だげどそんなのはあまりうまぐね。それに、他のところは、転作地が有り余っているから、その畑がダメになれば、他の畑があるがら。田子は山あいの土地で、畑にも限りがある。」 有機であれ、化学合成であれ、肥料をたくさん入れすぎると土地が傷む。環境もだ。

農薬にも施肥量にも気を使っていただける生産者さんがいて、嬉しく思う。

「どんな人が売ってくれているのか分かると、こっちもやる気が出るな。」と一良さん。

「僕もお会いできて良かったです。」 これまでは電話とファックスだけのやり取りだったので、こういう出会いは、何度あっても嬉しいものだ。

今年も「除草剤不使用のにんにく中くらいサイズ」の作付をお願いし、にんにくの町 田子を後にした。

種の作付はもうすぐ、10月上旬から始まる。

kamitai.jpg 「学校出てすぐ農家になっだが息子はまだまだ。」と一良さんは言う。だが、やっぱりお互いへ信頼感は、隠しきれない。そんなお二人だった

■にんにく(青森県産)  1玉 210円(税込)くらい。 3玉で 599円(税込)など。

■りょくけん野菜のバーニャカウダ 980円(税込)  フレッシュやゆでただけのお野菜を、牛乳で煮こぼしたにんにくとオリーブオイル、アンチョビのソースで食べる。イタリア・ピエモンテ州の郷土料理で、バーニャ=風呂、カウダ=熱い で、熱い風呂の意味がある。冬はソースを温めて食べるが、温めなくても美味。