りょくけん東京

りょくけんだより
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黒潮の森のはちみつ。

kurosio.jpg 黒潮が流れる土佐の海。中央奥に見えるのが足摺岬

松山空港から直接来れば5時間くらいだろうか、愛媛 宇和島と高知 足摺岬を結ぶサニーロードを車で南下し、土佐清水市に入った。通常は高知龍馬空港から行くのだろうが、途中、しまなみ※と真穴※の農家さんに立ち寄ったので、そのようなコースになった。

海岸線に沿った道路で、いつからか、右手にはずっと海が続いていた。かなりきれいだ。

足摺岬の手前でわき道にそれて、山を上がった。最初は広かったがだんだんと狭くなっていく。後ろから来た某大手宅配便のトラックも迫ってくる。「2t車がここまで来るのか…。さすがだな。」なんて思う。

ubamegasi & subako.jpg ウバメガシ。傍らに巣箱が見える。

標高200mくらいまで上がったところだろうか、蜂の巣箱らしきものと、姥目樫(ウバメガシ)らしき樹に囲まれた、それらしき家が現れた。車を降りて訪ねてみる。

「すみませーん!」

「あ、ほら、りょくけんさん、来たよー。」お母様と息子さんが、順番にのそっと迎えてくれた。隠遁者っぽい無精ひげを蓄えているが、息子さんは若い。こんなに若い方があの奥深いはちみつをつくっているのか!と正直驚く。

hiryoyuki.jpg 3代目、中平広幸さん。

「じいさんのころからつくっているから、もう50年以上になるかなあ。」 この地域に、おじいさんのときに入植してきたらしい。はちみつはそのころ始めたのだそうだ。お父さんの定信さんは、製材所に勤めながらポンカンを栽培し、主に息子さんの広幸さんが、蜂の管理を主に行っている。3代目だ。

「これは、もしかしてウバメガシですか?」

「そう。これもあれもそうだよ。ここイらじゃたくさんなっちゅうぎ。」

ウバメガシは、和歌山県南部~瀬戸内海沿岸~四国の太平洋側までの地域に分布地域が限られる樹木で、備長炭の原料として唯一認められている。4月に咲くその花の蜜を日本蜜蜂は好んで採取するらしい。直径1cm程度とかなり小さい蜂だが、半径2kmに渡って活動し、ウバメガシの他、山にある四季折々の花の蜜を採取し、「百花蜜」に仕上げていく。梅、桜、びわ、みかん、ウバメガシ etc.さまざまな花の蜜を取り入れることによって複雑で濃厚なはちみつが出来上がるわけだ。

「これが巣箱ですか?」

「そう。まだ寒いからあんまり飛んでない。…ん?今日はあったかいから飛んどるわ。」

一般的な養蜂家は、西洋蜜蜂を飼う。日本蜜蜂が寒いと活動しないのに対し、西洋蜜蜂は気温の高低にかかわらず働くからだ。繁殖力が強く、収穫量も多いため、明治以降、急速に西洋蜜蜂が普及した。はちみつ専門店で、「みかん」や「アカシヤ」、「そば」など、花の名前を冠したはちみつを見かける。これらは、西洋蜜蜂の巣箱を、たとえば、みかん畑に設置して、主にその花の蜜を採取させて生成されるはちみつだ。採取される花によって、香り、風味、もちろん味も変わってくるので、それぞれ特徴のあるはちみつになる。四季を通じて寒暖関係なく活動できる西洋蜜蜂ならではのはちみつで、「単花蜜」と呼ばれる(日本蜜蜂は、寒いと働かないから、特定の時期にだけ咲く花からの採取は難しい)。

余談だが、日本の人には「みかん」がもっともなじみやすい風味で人気があるらしい。特徴が強いものとして「そば」があり、色が濃く、申し訳ないが、「肥溜め」のような香りで、味も独特だ。

「でも何で西洋蜜蜂を飼わなかったんですか?」

「西洋蜜蜂は、ここイらじゃ住めん。」

「え?何でですか?」

「スズメバチがいるがぁ。」

スズメバチは、蜜蜂の天敵。1匹でも巣に入ると、コロニーは壊滅され、蜜を略奪される。カチカチカチカチと鋭いアゴを使って蜜蜂を粉砕してしまう。

ところが、日本蜜蜂は、スズメバチを殺すことが出来る。

「1匹なら確実。2~3匹くらいまでならスズメバチがやられるね。」とサラリ。

日本蜜蜂は激しく羽を動かすことにより、体温を上げ、巣に進入したスズメバチを灼熱死させることが出来るのだ。あの小さい体で自分より数倍大きな蜂を倒すのだから、すごい。

aketeageruyo.jpg 開けよか?

lets open it 1.jpg 正面にさえ行かなければそんなに怖いもんやない。

here you are!.jpg 「おお?何かウジャウジャしたものが…。」

bee japanska.jpg ジャジャーン!日本蜜蜂!

昨今、このスズメバチへの耐性が見直され、日本蜜蜂を飼う養蜂家も増えていると言うが、それでもまだ希少。そして、なにより、一年かけて培われた日本蜜蜂のはちみつは、良質なのだ。西洋蜜蜂のそれと比べ、糖度が+10度くらい高く、濃厚なのだ。

「煮物とかに使う以外にね、コーヒーに入れたりもしとるよ。」とお母さん。

「そのままでは食べないんですか?」

「甘すぎて、のどが渇くがぁ。」 広幸さんはそういうが、私が食べた感想は、そこまでしつこくない。糖度が80度以上、と高いのにもかかわらず、さらりとしていて、かなりのどが潤う。

ちょっと特別な、日本蜜蜂のはちみつ。少し高価だが、一度お試しいただければと思う。

hatimitsu.jpg

■黒潮の森のはちみつ(大) 10,500円(税込) 500g入り 

■黒潮の森のはちみつ(小) 2,310円(税込) 100g入り

※はちみつの賞味期限について …蜂蜜自体が持つ強い殺菌力のため、腐ることはない。

※一歳未満の幼児には与えないでください。

※しまなみ…広島県の尾道と愛媛県の今治を結ぶ道路群。因島、大三島などの島々に橋をかけ、本州と四国を結んだ。

※真穴(まあな)…日本のみかん3大産地ブランドのひとつ。真網代(まあじろ)と穴井(あない)の両地域を合わせてこう呼ぶ。3大ブランドの残り二つは、隣接する川上と日の丸。