←あまだまキャベツ
��.収穫適期が短い。
��.病気にかかりやすい。
��.収穫量が少ない。
そんな、ヘレンケラーではないけれど、三重苦のキャベツを育てている農家さんが愛知県の豊川市にいる。
キャベツには、一年で二回の旬があるという。やわらかく甘みがあり生食に向く春キャベツと、固く締まっていて甘さがあり、煮込みに向くという冬キャベツだ。だが、りょくけんとしては、誰がなんと言おうと、キャベツの旬は冬だ。そう断言させるだけの理由がこの「あまだま」にはあるのだ。
かつて某フライドチキンチェーン店から、コールスローの具に、と依頼を受けたが、キャベツの味がドレッシングに勝ってしまうから、と採用されなかった。トンカツ屋さんに持っていっても、キャベツはトンカツの脇役でないと行けない。これではキャベツが旨すぎる、と言われ続けたとか。
甘く、みずみずしく、やわらかい。
冬のキャベツは生食に向かないと言われるが、このあまだまはバリバリ食べられる。
ピッチリした細身のジーンズに、ハートと星のアクセサリーがついたメガネ、紫色のマニキュアで彩られた爪。生産者の入倉さんは、一見するととても農家さんとは思えないほどおしゃれな方で、ちょっとびっくりする。しかし話し込んでいくうちに「農業は学問。」であると思わせるほど、研究熱心で、栽培のこと、野菜のことをよく知っている。「苗半作※」、「旱魃に不作なし※」などなど農業に関する格言も次々と出てくる。
「じゃあ、苗を見にいきましょうか。」1時間弱、事務所で話し込んだ後、圃場を見に行った。「この苗とこの苗。色が違うでしょう。この色になっていれば、まず大丈夫。上からなでるように触ってみて。ほら固いでしょう。これが良い出来の苗。」ハウスの中に高さ15cmくらいに育った苗が並んでいる。撒いた時期により、色味も固さも違う。「ずいぶん立派なハウスですね。」育苗(いくびょう)のハウスにしてはかなりがっちり作られた立派なハウスで、そこからも、入倉さんの苗にかける意気込みが伝わってくる。
←キャベツの苗。発芽から10日ほど。
←あまだまキャベツの苗2。双葉が枯れ始め、立派になってきた。
「基本的に子育てと一緒で、人格を形成する時期に、育て方を間違えなければ、良いものができる。肥料をどうぞどうぞって上げすぎたら、畑に出したときに、少しの気候の変化でだめになるし、上げすぎなくても、今度はひねくれる。ほら、って肥料を上げても、もう『いらない!』って吸収しなくなるんだよね。」
なるほど。
ハウスを出てすぐの圃場にキャベツが立ち並ぶ。入倉さんが精魂込めて育てた苗であっても、そのうちのいくつかはすでに根こぶ病やら、生育不良のものが見受けられる。やっぱり難しい品種なのだ。ウィルスや虫もだが、鳥も大いにやってくるという。特にカラスの害はひどいらしい。それも、やっぱりおいしいからなんだろうなあ、と思う。
←「菌核病」という病気にやられたあまだま。
←根こぶ病。こぶみたいなものが根に着く。こうなると生長しない。
「収益は大丈夫なんですか?」
「何年もやっているけれど、『あまだま』だけではダメだね。」
入倉さんも経営者。だから、あまだま以外のいろんな品種をつくって採算をあわせる。
「じゃあ、なんで『あまだま』をつくるんですか?」
「自分のプライドのため。」と、入倉さんの口元が引き締まった。
心して販売しなければ、と思いを新たにする。入倉さんのあまだまキャベツ。短い旬をお見逃しなく!
■キャベツ(あまだま) 1玉 399円(税込)、1/2カット 210円(税込) 11月中下旬~1月上旬予定
■オレンジ白菜 1/4カット 210円(税込)、1/2カット 399円(税込)、1玉 630円(税込) 12月上旬~2月上旬
■あまだまキャベツのコールスロー 100gあたり347円(税込) 入倉さんのあまだまキャベツに、白菜を入れたコールスロー。マヨネーズを一切使わずに仕上げました。 りょくけん松屋銀座店のほか、伊勢丹新宿本店の期間限定コーナーでも販売中! 1p(約120g入り) 399円(税込) ~11月30日(金)まで。