去る25日金曜日と29日火曜日に、松屋銀座店のスタッフと産地を回った。産地や農家さんを知らなければ、「産地」と「消費地」をつなぐメッセンジャーたる『りょくけん』の役割が果たせないと思うからだ。費用はそれなりにかかるが、全員の見識も深まり、行くたびに、売場に送られてくる商品への思い入れが強くなっている。
今回は、りょくけんの本丸とも言うべき『ルーツファーム』、(株)りょくけん会長が主宰する『永田農業研究所』、そして『鈴木農園』の3つの園地を回った。ルーツファームは菊川市、あとの二つは浜松の市内にある。
25日は、自分ではなく、(株)りょくけん生産部OBの朝倉さんに引率をお願いした。今年の2月に、10年のキャリアを終え、家業である農業に従事するため実家に戻った方だ。あいにくの雨だったが(また、雨でなければ、朝倉さんも農業を休めなかったのだが)、どちらの農家さんでも熱心に説明を受け、学ぶことが多かったようだ。
29日は、別のメンバーを引き連れて同じ農家さんを回った。
10時 ルーツファーム着
直売所の前に、フェンネルやタイム、ローズマリーが植えてあった。ドクダミも…。植えているわけではないか…。選果場を見せていただく。できたトマトはすべてがお店に出るわけではなく、形の悪いB品も多少出るし、サイズ別に分けたりしなくてはならない。これが『選果』だ。衛生にも気をつけ、全員が帽子、手袋、白衣を着用している。 虫が入らないようにネットをはったブースもある。
ルーツファームは敷地面積20ヘクタールを誇り、17棟のハウスを備える。会長をして「東洋一の設備を持ったハウス」と言わしめた、最新の設備を持つ農場だ。さまざまな品種を試験栽培しているハウスとイチジクのハウスを見た。オレンジミニトマト、オレンジミディトマト、イエローミニ、プラムトマト、イエロープラム、マイクロトマトなどなど。ルーツ農法にあったトマトをここから選抜し、次作型につなげる。 イチジクのハウスは少し異様だ。トマトはアンデスが生まれ故郷だから、ハウス内を涼しくしようと、この時期は努めているが、イチジクのハウスはすこしじめっとする。ハウス内に広がる景色もまるで熱帯だ。こちらも昨年は14~15種類ほど作付けしていたが、今年は選抜して、品種を減らしているが、皮ごと食べられる特徴は継承している。6月中旬からかなり大量にそして短期間に出荷されるはずだ。
そこから一路、浜松に向かった。静岡県は横に長く、意外に移動に時間がかかる。まずは腹ごしらえ。会長と懇意にしている方がイタリアレストランをオープンさせた。正確にはオープン前なのだが、特別にランチの予約を取らせていただいた。レストランの名前を「Grande rosso グランデロッソ」という。偉大なる赤の意味だ。ふと、弊社が美味しんぼに取り上げられた巻のタイトルを思い出す。「大地の赤」だ。村松支配人に伺うと、やはりこの屋号もトマトの赤い色を意識したものなんだという。
「今日はりょくけんのスタッフさんが来るということで、特別に料理を用意しました。すべてトマトはりょくけんさんのトマトで、玉ねぎも昨晩、先生(=会長)がもってきてくれたものです。」
前菜からデザートまですべて堪能させていただいた。会長の行動範囲の広さには改めて感嘆する。途中、シェフのCarloさんが、僕が持ち込んだルーツファーム産の「グリルトマト」を焼いてくれた。
「これはシチリーのオリーブオイルをしあげにふりかけました。このやり方が一番オイシイ。」
Carloさんは、浜松の料理学校で教鞭をとっていたのだが、やはりお客様に料理を提供したいという思いで、今の店長に出会ったのだという。果肉がとろっとして、酸味が甘みに変わり、香ばしい旨みが出ていて美味しかった。
前菜。薄くスライスしたりょくけんトマトにモッツァレッラを挟み込んだ。食べやすく、美味しい。
基本であるペペロンチーニに、会長の玉ねぎ、りょくけんトマトからつくったセミドライトマト。まるで杏のような風味。
デザートに行く前のちょっとした気配り。「a prest」。英語で言えば、at short。 「また近いうちにね」の意味だ。
女性客を取り込みたい、との思いからデザートに一工夫。4種類のデザートを堪能できる。手前から、グランでロッソ風ティラミスー、ズゴット、木苺のパンナコッタ、バナナとチョコのケーキ。どちらも美味しい。
そこから北上。(株)りょくけんの近くにある、畑に着く。みかん畑の間の沿道を通り抜けると突如として展開する赤土の畑だ。ちょうど、オクラの定植が終わり、キタアカリの収穫を行っているところだった。